>>207
「君が転校生の太田くんだね? まずは寮の君の部屋に案内するよ」
中年男は人の良さそうな笑顔を浮かべながらゆっくりと歩き出した。
「ここまで坂を登ってくるの大変だっただろ」
「......いえ」
「寮生活は初めてだよね? 不安じゃない?」
「......」
「でもね、うちの寮生はみんないい子ばっかりだから」
「......」
「すぐにたくさん友達が出来るよ」
「......いらないです」
「えっ?」
「友達とかいらないです」
すげない返事をする太田に、中年男は気を悪くした様子もなく「キミ、クールだねえ!!!」と何故か嬉しそうに笑うのだった。