これや!ほんまだいすこ


170 やまなしおちなしいみななし 転載ダメ©bbspink.com sagete 2018/08/15(水) 17:39:55.84 ID:???
全種SS 土砂降りの雨の中 赤安


安室(攻め赤井)
安室は悩んでいた、困っていた
悩みの種は、公安で抱える厄介な事件でも、組織で行われる非道な犯罪行為でも、はたまた喫茶ポアロの新作スイーツメニューでもなく、
窓の外の大雨を前に、リードを咥え期待した目で見上げる愛犬をどのように説得すべきかということだった
「ハロ〜?ハロちゃん〜?ハーたん〜?はーりゅぅ?ね、雨の音聞こえるよね?」
「アン!」
「おそとはハッチ(ハロちゃんの略)の嫌いなお水でいっぱいだよ〜?」
「アンアン!」
「今日はお散歩難しくないかな〜?」
「くぅーん……」
「……チッチ(おそらくハロのこと)はそれでもお散歩行きたいの?」
「アン!」
「帰ったらるるちゃ(ハロ以外いないのでハロだと思われるが……)お風呂だよ?」
「アン!」
「……わかった行こう」
いかな安室と言えど、愛犬のうるうる攻撃には弱かったのだ

ブルーグレーのレインコートを着込み、ハロにも犬用レインコートを着せ家を出る
一瞬、ちゃんと外に出たらハロがあきらめてくれないかなと期待したが、
ハロは大粒の雨などものともせずいつものスピードで飛び出していく
諦め、リードが伸びすぎないようハロに歩調を合わせた
町内のお決まりのルートも終盤、いつもだったら2〜3組の犬に逢うのだが今日は誰とも会わないまま公園までたどり着いた。
さすがに遊ぶ子供もいない。
人気のない公園をぐるっと回って帰ろうと思っていると、前方のベンチに黒い影が見えた
「やあ降谷くん、奇遇だな」
「赤井?」
土砂降りの午後、人気のない公園で、赤井秀一がいつもの恰好で傘もささずにベンチに座っていた
「アン!」
ハロが喜んで赤井に飛びつくのを、赤井も笑顔で受け止める
とても微笑ましい光景だ、雨さえ降っていなければ
「こんな日も散歩とは犬飼いは大変だな。ところで降谷君ライターかマッチを持っていないか?しけってしまって」
「こんな日に傘もささずにこんなところにいるあなたに言われたくありません。というか湿気るってレベルの話じゃないでしょそれ」
そうかな、となぜか照れたようにニット帽の上から頭を掻く赤井
ハロは相変わらず嬉しそうに赤井にじゃれている
そんなハロと赤井を交互に見て、安室は深くため息をついた
「僕のうち」
「うん?」
「僕のうちこの近くなんですけど」
「ああ、知っているよ」
「……濡れたまんまじゃ風邪ひくし、ハロも洗わなきゃいけないから、うちでハロをお風呂に入れてください!」
ああいいたくなかったのに。
絶対この奇行だって単なる赤井の計算通りの行動なのだ。
だが、わかっていて”毎回”乗ってやる自分も自分だ
赤井はニヤリと笑うと膝を払って立ち上がった
……晴れていたならパンパンという音がしたであろうその動作は、べちゃべちゃと不快な音を立てた
「ではそのハロ君の入浴補助のお役目承ろうか。もちろん、飼い主も込でな」
「……馬鹿」
人間より目線の低いハロにはちゃんと見えていた。レインコートのフードに隠れた安室の嬉しそうな顔が。