天狗と爺井

天狗「爺井」
爺井「なんだ」
天狗「酒だ」
爺井「ふん、フィッツジェラルドとは奢ったな。……なにがあった」
天狗「婆室を不安にさせたことはあるか?」
爺井「山ほど」
天狗「別れを切り出されたことは」
爺井「ニューヨーカーが町中で埃を吸い込むよりもたくさん」
天狗「じゃあなんでずっと一緒にいられた」
爺井「決まってるさ。離れようとする度俺が掴んだ手を、あいつが握り返すからさ」
天狗「……そんなものか」
爺井「そんなものさ」
天狗「そうか。邪魔したな」
爺井「そうだ、猫に言っといてくれ。この前の煮物は塩分控え目柔らか仕上げで老人に優しくて旨かったぞと」
天狗「ハハ、もう持ってこさせないさ。あいつもあいつの料理も全部俺のもんだ」
牛「あー天狗です!天狗も遊びに来てたんですか?」
ハム「ブルボン貰った?」
瓜坊「俺はブルボン大好きだぞ!ハムくんみたいだから!」
天狗「年寄りにあまり迷惑かけるな。暗くなる前に帰れよ」
瓜坊「おう!」
ハム「はーい」
牛「はー天狗はいつもはぁどぼいるどですねぇ」
瓜坊「いつも堂々としててカッコいいぞ!」
ハム「ダンディ……(うっとり)」
瓜坊「ハムくん!?俺も、俺もあんな風に強い男になるぞ!?」
爺井「なるほど、あいつもまだまだかっこつけだな。弱味を見せられるのが俺みたいな年寄りくらいというわけか」
牛「お爺ちゃん?なんですか?」
爺井「なんでもない。さ、ゼリーがあるぞ食べていけ」
瓜坊「それ砂糖ジャリジャリするやつだろー!」