いま、リヴァイは宿舎で眠っているはずだ。だとすればこの光景は、幻でしかない。自分の意志を持って選ぶ「目標」ですらない、ただの「夢」。
『海を見に行こうよ地平線まで全部塩水』
 記憶のなかで、少年の言葉がこだまする。未だ『夢』を見失っていない、未来を見つめる声。
『あのとき、おまえが私ではなく、アルミンを選んだのは……』
 背中から、声が聴こえる。もう、いなくなった者の声だ。
『彼が、より多くの人々のための、夢を見せてやれるからか?』
 この言葉は、自分の頭が作り出したものだ。つまり、リヴァイにとって都合よく解釈した、妄想だ。