宿主のオスをメス化させ産卵マシーンに

フクロムシはメスのカニに限らずオスのカニにも構わず寄生します。
オスのカニは卵を産まないので、卵を守る習性も本来はないのですが、
フクロムシに寄生されたオスのカニは、不思議なことに徐々にメス化していくのです。
フクロムシに寄生されたオスは、脱皮を繰り返すごとにメスのようにハサミが小さくなり、腹部が大きく広がっていきます。
見た目も振る舞いもメスのようになっていきます。
そして、オスのカニもメスと同様、自分の卵のように大事に育てようとします。


そして、メスのカニが自分の子どもを孵化させ海中に拡散させるように、このオスのカニもフクロムシの卵塊の世話をし、
フクロムシの卵が孵化するとそれらの個体を海中にまき散らすような行動をします。
このように、フクロムシに寄生されたカニは体内の栄養分を取られ、
ホルモンバランスを崩され、神経系を乗っ取られ、ついにはカニ自身の生殖機能を失ってしまいます。


つまり、フクロムシに寄生されたカニは自らの子孫を残すことはできず、ただフクロムシに栄養を与え、卵を守り、
孵化したフクロムシの子どもたちを拡散させるためだけに生きていく、まるで奴隷のような一生を送ることになります。
こんなにも栄養を奪われ、奴隷のような生活を強いられるカニの寿命は短くなりそうな気がします。
ところが、繁殖能力を奪われているため、繁殖に使うエネルギーが抑えられるので逆に長生きし、
さらに長期間にわたってフクロムシの子どもを育てていくことになるのです。



はぁん夢が広がるねぇ