意識が朦朧として身体が動かない。
遠くで衝撃音と英語のスラングが聞こえる。
何を言っているのかよく聞き取れなかったが、多分ライがターゲットの腹にでも蹴りを喰らわせてるんだろう。
最後にライの姿を視認し僕は意識を手放した。
コイツにこんな姿を見られたくないがもう限界だった。
その後気がついたのは拠点にしていた古いアパートの自分の寝床。
部屋には一人きりで毛布に包まれていた。
どうやら身体はキレイにされているようで素肌に触れる毛布が気持ちいい。
ただし身体にはまだ薬が残っているようで頭はクリアなのに手足にはしびれが残り、身体には持て余したような熱が籠もっている。
「気が付いたか」
「ええ、まだ薬は効いているようですがだいぶ抜けてきました」
「そうか…具合はどうだ」
「どんなって…多分媚薬と意識を混濁させる成分が入ってますね。それから手足に痺れもありますから……まあヤツの狙い通りの薬にはなっているんでしょうね」
ライが苦虫を噛んだ表情をしてため息をついた。
なんでお前がそんな顔してるんだよ。
もしかして面倒をかけられて迷惑したからか。
「ああ、そうだ。今回は助かりました。流石に僕もあれ以上アイツに好きにさせるのは嫌でしたし」
「お前に聞いてるのはそう言う事じゃない」
「はあ?」
「……身体の心配をしてるんだが」
「……心配」
まさかライの口からそんな言葉が出ようとは…
唖然としているとサイドテーブルにお茶のペットボトルとコンビニおにぎり、サンドイッチが置かれた。
ご丁寧にもお茶の蓋はライが開けてくれた。
まだ痺れがあるため有り難いがなんだその気遣いは。
「とりあえず水分をとれ。あと食べられそうならこれも食え」
「あなたが買ってきたんですか」
「他に誰がいるんだ」
「僕の好きなお茶と具だ……ありがとうございます」
ライは軽く頷くと部屋を出ていった。
本来ならこんな組織にいる人間が用意した物なんて口にしたくない。
ましてや目の前で開けられたとはいえ開封済みのものなんて。
だがライはこんな組織にいる人間だと思えない事をするヤツだった。
もしかしたら僕と同じ立場だったりするのだろうか?
まだ片手で足りるほどしか任務で一緒になってないがたまにこうやって違和感を感じる事がある。
いやいや、警戒心を解いちゃいけない。
お茶とおにぎりで絆されんな!
僕は未だに残る痺れと熱を鎮めるがごとくお茶を飲み下した。
終
酷ックスにならない
お兄ちゃんライ
もうすでにバボちゃんの警戒心が薄れてる