あるところにうりうりのううりがいました。
ううりは瓜をたっぷりと詰め込んだカゴを持ち、街行く人々に声をかけます。
「うりはいりませんか」「とっても甘くて美味しいうりです」
ううりは一生懸命に呼び込みをしました。
しかし人々はそんなううりをちらりと一瞥するだけで決して足を止めてはくれません。
外気温は10度以下の真冬です。人々は白いマスクを付け俯きながら足早に自宅を目指して歩いていきます。
皆、右手にはやっと見つけた使い捨てマスク、左手にはチョコレートの袋を持っています。
誰もただの瓜などには見向きしないのです。
ううりはそれでも瓜を売ろうと頑張りました。
しかし使い捨てマスクやチョコレートを前にしては瓜はあまりにも魅力がありません。
瓜は売れず、とても寒くて指先がかじかんできました。もう心も体も参ってしまいそうです。
ついにううりはカゴを地面に置いてしまいました。
その時でした。
「瓜を全部買うで!」
一人のモブおじさんがぼろ布のような財布を片手にううりの前に現れました。
「本当ですか? ありがとうございます」
(瓜は全部で10個や、わいはにまんえん持ってるしクレジットカードも持ってるで!)
モブおじさんは内心でほくそ笑みました。
しかし
「お支払はUUR-payのみになりますがよろしいですか」
「え」
ううりが読み取り機を出すと、モブおじさんはどこかへ行ってしまいました。
モブおじさんはガラケーユーザーだったのです。
「その瓜を全部買うで! もちろんそのpayでや!」
ううりの前に新たなモブおじさんが現れました。
「本当ですか?ありがとうございます」
売り損なった瓜が売れそうだとううりはとても喜びました。
(UUR-payは今ここでインストールしたるで! わいの完全勝利や!)
しかしアプリを開いたモブおじさんは絶句しました。
「え」
紐付けできる利用可能カードはアメックスとダイナースの2種類だけだったからです。
「ッヒ……現金や!今から現金チャージしてくるで!!ううり待っててや!!」
モブおじさんはそういうとどこかへ走って行ってしまいました。
はあ、とううりはため息をつきました。
2度も瓜を売り損ねてしまいとても悲しい気持ちになったからです。
吹き付ける風はとても強く、手足の指先は寒さで感覚がなくなってきました。
もう今日は瓜を売るのを諦めようかーーそう思ったときのことです。
「瓜を全部頂くよ。もちろんUUR-payでね」
銀色の髪をした外国人がううりの前に現れました。
「本当ですか?ええとレジ袋がご入り用だと1枚5円でーー」
ううりがそう言いかけると、銀髪の外国人はううり耳に使い捨てマスクをそっと掛けました。
「レジ袋はいらないよ。カゴを持ってそのまま付いておいで」
アプリに表示されたバーコードをスキャンするとビーマイコーチ!!という決済音が鳴り響きました。
ううりが売上データを確認すると、なんと売値の何百倍もの金額が計上されていたのです。
「ところでこのUUR-payはどんな還元をしてるんだい?」
「いっぱい買ってくれると……僕が還元されます」
銀髪の外国人はううりに優しく微笑み掛けました。
「俺の国ならウイルスなんて即死滅さ。濃厚接触が感染原因だなんてナンセンスだね」
こうしてううりは銀髪の外国人と共に、遠い異国へと旅立っていったのでした。