愛に抱かれるとき忠はいつも指を噛んだり枕に顔を埋めたりして低い唸り声しか出さない
身体が反応しているものの実は嫌々寝ているのではと不安になった愛は攻め口を変えてみた
親指の付け根を猿轡代わりにしながら荒く呼吸している忠の手を愛の指で布団へと絡め取った
それでも忠は懸命に歯を食い縛る
聞かせろ お前の声
耳元で囁いて唇の隙間から舌を挿し込んだ
忠の舌を捕えてすぐに指や肩の力が抜けていくのが分かった
唇と唇を離し忠の奥を突くと開かれたままの口から呼気と共に声が溢れた
うううううううううおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああアアアアアアアア
甲子園球場のサイレンそっくりの嬌声で寝静まっていた屋敷中がざわめきだした
廊下を駆ける大勢の足音が愛の寝室の前で止まり背後の扉が開きすぐに気まずそうに閉じられた
翌朝の食卓では皆の口が飯を食う専門に使われ静かな朝食となった