猗窩座もなにか口を挟むわけではなくじっと杏寿郎の言葉に耳を傾けているようで、杏寿郎が口を噤んでしまうとその場は耳の痛くなるような重い沈黙に包まれた。
「・・・・・・杏寿郎」
数秒か数十秒か続いた沈黙を破ったのは、感情の篭らない無機質な魘夢の声だった。
「俺と付き合ってる時も、そいつと連絡とってたの?」
「とってない・・・っ!!」
淡々と紡がれた魘夢からの問いかけを、咄嗟に顔をあげて杏寿郎は否定した。
「連絡なんか一度もしていない!別れてから携帯の番号だって変えたし、猗窩座の番号だって消したんだ!」
「そのワリには、お互い示し合わせたように他人のフリしてたよね。俺に対して後ろめたいことがあったんじゃないの?」
「ちが・・・っ」
「お前が邪推するのは勝手だが、杏寿郎の言うことは事実だぞ」
皮肉めいた台詞に思わず言葉を詰まらせる杏寿郎の声に被せるように、猗窩座が至極冷静な物言いで口を挟んでくる。
「あの日再会するまで、俺は一度だって杏寿郎と話したことも況してや会ったこともない。―――あの時他人のフリをして、杏寿郎が俺に合わせてくるかは賭けだった。
俺が何か言う前に背を向けられる可能性もあったしな。・・・・杏寿郎は随分と動揺していたから、うまくいったが」