ハンドルネームへの誹謗中傷で名誉毀損が成立しにくい理由は、第三者がハンドルネームに対する誹謗中傷を見ても、現実のあなたを特定できる可能性が低いからです。
名誉毀損の成立が認められるには、以下の3つの要件を満たさなければいけません、
名誉毀損の成立要件
社会的評価の低下
誹謗中傷の内容が社会的評価を低下させる表現である
具体的事実の適時
社会的評価を低下させる具体的事実を挙げている
公然性
公然の場で不特定または多数人に対して向けられている
【詳細記事】名誉毀損とは|成立する要件と訴える方法をわかりやすく解説
ハンドルネームに対する誹謗中傷は、誰に対する誹謗中傷かが明確となっておらず、被害者の外部的評価を低下させることにならないので、名誉毀損が成立しないのです。
要するに、ネット内でのハンドルネームの評価が下がったとしても、現実であなたの社会生活に対する評価が下がることにはならないため、名誉毀損が成立しないということです。
ハンドルネームでも名誉毀損が成立するケースとは
ハンドルネームに対する誹謗中傷についても、特別な事情があれば、名誉毀損が成立する余地はあります。
すなわち、以下のような特別なケースに該当する場合には、名誉毀損が認められる可能性は否定できません。
名誉毀損が成立しやすいケース
ハンドルネームと本人との結びつきが社会的に明白である
ハンドルネームが本人の通称として認知されている
ハンドルネームと本人との結びつきが社会的に明白である
ハンドルネームを見た人間の誰しもが、これをあなたのハンドルネームであると認識している場合、そのハンドルネームに対する誹謗中傷は、現実のあなたの社会的評価を低下させる可能性があります。
このようにハンドルネームが現実の自分と結びついている場合には、ハンドルネームへの誹謗中傷であっても、本人に対する名誉毀損と評価する余地はあります。
ハンドルネームが本人の通称として認知されている
上記と重複するところもありますが、ハンドルネームが本人の通称として広く認知されている場合には、ハンドルネームへの誹謗中傷は本人への誹謗中傷と同視できます。
例えば、作家のペンネームや芸能人の芸名は、本人を表す名称として認識されていますので、当該ペンネームや芸名に対する誹謗中傷は、本人に対する誹謗中傷と同視できると思われます。
実際に裁判で、ハンドルネームに対して名誉毀損が成立した事例も存在します。
とある作家を誹謗中傷するために、作家のペンネームを用いて掲示板に中傷する投稿をし、名誉毀損が認められた事例。
【詳細】東京地裁判決平成24年4月26日D1-Law28180860
漫画のペンネームを利用して誹謗中傷の表現をしたこと(いわゆるなりすまし行為)で、その漫画家の社会的評価を下げて名誉毀損が認められた事例。
【詳細】東京地裁判例平成25年7月17日ウェストロー2013WLJPCA07178037