Q 出世作の「Dr.スランプ アラレちゃん」までにボツを大量に出したそうですね。
A うん、500枚くらいね。創っていって、ここを直してって。僕も新人、彼も新人。
2人でやりとりしながら漫画を創っていかないといけない。その過程で、2人が納得いく作品が描けるまでに500枚かかったということですね。
でも、彼も言ってますけど、500枚も書いたと思わなかったでしょ。「ああ気がついてみればそのくらい描いていた」って感じじゃないかな。
彼はそれでも締め切りは守りますからね。プロの仕事は全部数字がついてきますからね。ページ数、締め切り、原稿料、読者の評価。
数字を気にして仕事できないのはアマチュアですよ。
Q Dr.スランプでは、悪の科学者Dr.マシリトのモデルになりました。
A マッドサイエンティストの回があり、インパクトがなくてボツにした。
僕が「お前のいちばん嫌いなやつ、嫌な奴を描いてこい」と言ったら、僕の顔を描いてきた。
Q 「ドラゴンボール」の制作秘話は?
A Dr.スランプは開始半年で、「もうやめたい」と言い出した。人気絶頂の時ですよ。
「描いていてつらい」と。ギャグ漫画は(一話ごとにエピソードが完結する)読み切りが毎回だから。
「違う漫画をやりたい」と。でもやめられるわけないよね。
編集長に言ったら、「スランプより人気が取れそうな漫画が描けたら、やめてもいい」。
それで、連載しながら、(次の連載のお試しとして)読み切りもやった。並行してやるのは大変だったけど、それでもやり続けた。よほどやめたかったんだろう。
彼も僕も「Dr.スランプ」で成功しているから自信はあった。かなり緻密な打ち合わせもした。でも読み切りは、全く受けなかった。
Q ドラゴンボールはずっと順調だったんですか?
A いや、それが最初は良かったんだけど、順調じゃなかった。
Dr.スランプの作家なので最初は色ページが付いていた。ところがそれがなくなってくると、じりじりと人気が落ちてくるわけです。
このままじゃまずいなと。読者アンケートで10位くらいまで落ちて、このままだと連載打ち切りだと。
彼と話をして、「主人公がやっぱりぱっとしない」「生きていないね」と。
で「(主人公の)孫悟空ってどういうキャラクターなの?何をしたい奴なの?作品のテーマって何なの?」と徹底的にディスカッションした。
ひと言でいうと「悟空は『強くなりたい』というキャラクターだろ」と。
ライバルと切磋琢磨して、その後に武闘家ナンバーワンを決める「天下一武道会」を設定した。