>>154
石段から降りてくるのは男性の老人です。
私はその石段がどこに続いているか知りませんから、
その老人がどこから来た人で、どんな人なのかも分かりません。
ただその状況を固唾をのんで監視するしかありませんでした。

それにしても夜中の2時ですよ...
なんでこんな時間に真っ暗な暗い路地の石段を下ってくる人がいるのだろうと、
私は不審者にでも遭遇したような気分になりました。
まぁ私も不審なんですがね。

老人男性は箱罠の前で歩みを止め、立ち止まりました。
そして、箱罠をまじまじと覗き込んでいます。
私はとても嫌な予感がしました。

しかし、次の瞬間に老人男性は箱罠から興味を逸らし、再び石段を下って行きました。
何やらブツブツと独り言をボヤきながらフラフラと立ち去って行ったので、
今思えばただの酒飲みの帰りだったのではないかと思います。
どちらにしても夜回りのキチガイ愛誤などではなく、本当によかったと思います。

そして、運の流れは私に向いてきたのです。

あろうことか、その老人男性の背後から、ビクティムが付いてきていたのですww
つまり、老人男性が箱罠の目の前で立ち止まり、去った直後にビクティムはそのあとを追って罠の目の前に現れたのです。
いつも通り極めて見にくかったのですが、老人男性の一件で時間が経っていたこともあり、私は暗がりに目が慣れていたようでした。
私はいつもよりビクティムの姿をはっきりと捉えていることに気が付きました。

ビクティムの様子から察するに、奴はもうすっかりここを餌場として覚えたようです。
私は数日に一回しか来ていませんが、もしかしたらビクティムは毎晩ここに餌がないかどうか確認しに来ていたでしょう。

その晩も、ビクティムは完全に箱の仕組みを理解しきった素振りで中の餌を盗ろうと、ゆっくり前進していきました。
そして、ビクティムが箱の中へ足を踏み入れると、一瞬で扉が落ちましたw

ガシャン!!!
ガシャガシャガシャガシャ!!!!!

何もかも理解していたつもりの餌が入った宝箱は、とうとうビクティムに牙をむきました。
ビクティムにとって、これまで何度も餌を盗って大丈夫だったはずの夢の場所が、急に悪魔の戸を閉じて、固く開かないのです。
このパンドラの箱を理解しきっていたつもりのビクティムが、今の状況を何も理解できていませんw
その絶望的な落差を受け入れられないのか、ビクティムは何分経っても落ち着く様子がなく、
ずっとガシャガシャと音を立てて暴れ続けていました。
これこそまるで、執行直前の死刑囚のようです。
まぁ、見たことなどありませんがw


私はその様子を見て、心の中の悪魔が微笑むのを感じました。

さぁ、遊びの始まりだ、と。