率直に言えば自ら接待した結果の事であった。
……と思っていたのも束の間。来る5月は奴等の発情期だ。
私の家からは少し離れた地域の獣どもが再び増え始めたのか、あるいは縄張り争いに負けたのかは知らないがちょいちょいとまた周辺に現れるようになった。
私はゲンナリとすると同時に「これは久々に接待の時期かもしれんなぁ」と胸を踊らせていた。
そして2024年6月某日。夢の内部にて。
少し前に長年愛用していた捕獲器が天寿を全うしたので、オニューの捕獲器をこさえて再び獣との戦いを演じてみようとしていた……最中、早速捕まった。
改めて確信する。コイツらに知能はないな。
言語で思考できない生物は本能的で危険なのだが、獣は身近な生物としてはその最たる例だろう。
減らさねばならない。雑菌病原菌の媒介者め。
さてはて捕まった個体はなんと言うか……こう……微妙に人馴れしているのか勝又すれども、どこか控え目だった。見た感じた5キロくらいはありそうな大型個体なのだが。
気迫がないなーと少し残念だったがまぁやることは変わらない。
こいつにも地獄……いや天国にも近い接待を味わわせてやろう。
人間という生物がいかに知能で戦ってきたのか見せつけてやるのだ。
てなわけで実験をしてみたい。コイツには不眠の刑を執行することとした。
早速だが接待専用ルームにご案内。
まずドラム缶を用意。少し前に興味本意で「ドラム缶風呂」をやりたくて購入したものの、なんか悲しくなって実行せずに死蔵していたものだ。
まさかここで活きるとはな。備えあればってやつか。
そのドラム缶に水を張る。人間がすっぽり収まるサイズなので、獣にはだいぶデカイがその方が都合が良い。
獣にも下処理を施す。
獣の顎の関節に指を押し込むと無理やり口を開けさせる事が出来るのだが、左右の顎関節に先端の鋭利なU字フックを貫通させようと思う。
この左右のフックで頭部だけを支えに吊るして、ドラム缶(水)風呂に浸けて獣の睡眠を妨害してやろうという構図だ。
私はパラ紐で繋がれたフックを先ずは右の顎関節にグリグリと押し込む。
獣はここでようやく自分の置かれた状況を理解したのか、けたたましく叫びをあげる。
なんなら私の指先が噛まれそうになる、四肢の爪がアトランダムな方向に攻撃を始める。危うい危うい。
抵抗しても無駄だぞ。しかし獣の頭を持ち上げながら宙ぶらりんでは刺し辛くて埒があかない。
暴力的なまでに左手で頭を地面に対して横這いに押し付け固定する。
胴体は下半身を足で踏みつけ固定。
押し付けた時に頭部に嫌な響きを感じたがまぁ大丈夫だろう。
あいつら物理攻撃に対しては意外と丈夫だからな
そのまま右手でグリグリとフックを押し付け……刺さった!
「ガッキャリギャリ……カフッカフッ」
微量の出血を伴いながらそんな呻き声をあげている。
そうそう顎関節をやられたから上手く鳴けないんだな。
バランスが悪そうだ。
直ぐ様、左側の顎も同じようにしてやった。
いい感じだ。U字フックは顎の外側から貫通して鋭利な先端が口の内側から外に飛び出している。
まるで金属の牙が生えたみたいだ。それも左右に。良いんじゃないか?
若干血で汚れているしその様はまるで獲物を狩った後の神話生物だ。
パラ紐で繋がれているのが少しダサいか。
つうか何ならこのまま手綱代わりにパラ紐を握って散歩をさせられそうでもあった。
……ので少し接待ルームの中を散歩させてみた。
私から逃げようとするのだが離れて紐が張ると顎に金属フックが食い込むのか
「ア゛ッ!」
みたいな声をだして大人しくなる。俺が近付くとまた同じ事を繰り返す。
面白いな。まるで"そういうオモチャ"みたいだ。
コイツらマジで知能ねぇな。
さて散歩もそこそこに、実験道具に括り付けていく準備を進める。
天井の梁の部分に丁寧に紐を結び(天井はそんなに高くない)、吊るされた時の獣がドラム缶(水)風呂に収まるようにする。
ドラム缶の中で宙吊りの獣がバタバタしている。