>>907

翌日の水曜日。
夕飯を終えた私は霧吹きを片手にいつもの散歩コースに出掛けていきました。

もちろんいつものコースです。
散歩はもう私の日課になっているのです。

10分ほど歩くと例の家がある路地に差し掛かります。
久しぶりに風がなく、夜空に星もたくさん輝いている良い水曜日の夜でした。

そして例の勝手口が見えてきました。
いつも通り台所には灯りが付いていて、遠目に見たらまだデブはその隙間に顔を出していません。

しかしながら私が一定の距離以内に近づくと、足音を聞きつけてすぐにデブが出てくるのです。

トコトコトコ・・・

ジロッ!!



出やがりました。
今宵も案の定、デブのお出ましです。

なぜか今宵はすでに表情が険しいです。
機嫌でも悪いのでしょうか?
それとも私を覚えていて、またあいつだ、という表情でしょうか?
はたまた、具合が悪いのニャ??

まあなんでもいいですが、デブは今宵も私を見ています。
今宵はなんだかデブに睨まれているような気がします。

デブがどういうつもりなのかは知りません。
でも私が睨まれていると感じたから、デブは私を睨んでいるのです。

じゃあ今日も口元をたっぷりと聖水で濡らしてやらないと!


今宵の私は昨晩とは違い、足早にデブに接近。
そして手際よくデブの口周りだけをびちょびちょに濡らし、すぐに何食わぬ顔で散歩にもどりました。
今宵は30秒くらいでその霧吹き作業を終えました。

私は決めたのです。

毎日、毎日、「デブが見るなら、私はかける」と。


つづく