飛田の街から明かりが消えて、はや2か月。各料亭には普段、休日がないため、今回の休業期間を利用して店舗を改装する経営者もいれば、これを機に廃業を決断した跡継ぎ不在の老齢経営者も4人ほどいた。
 30代の若い経営者は、組合が全店休業を指示する前に、自主的に休業した。
「もともと、感染症対策として、粘膜接触を避けることは徹底していました。キスをせず、オーラルセックスの時もコンドームの着用を徹底していました。それでもやはり、女の子は怖がっていた。(客を呼び込む)仲居さんも年輩の方ですから、従業員を守るために休業を決めました」

 ゴールデンウイークが明け、新型コロナの猛威が落ち着きをみせはじめると、組合も再開に向けて動き出し、全従業員が抗体検査を受けることを営業再開のルールに加えた。
 13代目組合長の徳山邦浩氏が話す。
「私らのような職種は、大阪府の休業要請に対する支援金ももらえなくて仕方ないと思っていました。ところが大阪府の吉村洋文知事は決断してくれた。私はね、涙が出ました。
支援金は各店舗に50万円で、全店舗あわせればおよそ8000万円となる。経営が苦しいお店もあると思うんです。ですが、支援金を原資とした抗体検査の実施を決めました」
 
飛田新地の経営者だけでなく地元商店街やPTAも抗体検査の運営委員会に加わり、出前を取る飲食店やおしぼり業者をはじめとする取引先、地域住人も無償で検査が受けられるように8000人分の抗体検査キットを準備した。
そして5月24日、第一陣となる150人が検査を受けたのだ。

「もし集団感染が起きたら、この街は一瞬で滅びてしまう。きちんと感染リスクと向き合う姿勢をお示しする必要がありました。また、我々は地域との共存なくしては存在できない職業ですので、地元の方にも検査を解放するのは当然だと考えております」(徳山氏)

 もし被検者に陽性反応があれば保健所に連絡を入れ、PCR検査などを実施してもらうように仲介するという。