お金持ちが自分が不幸という社会

高層マンションに住み、外車を乗り回す、誰もがうらやむような環境にいながら、それでも彼らは自分を不幸だと言う。

「ずっと金の話をしてる人が多いですよ。子どもの前でも金金金金、金の話ばかり。患者さんが小さい頃からずっとそうだったんでしょうね。

金がない人は金の話をしますよね。それは切実に金がないんだから仕方がない。でも金もちは金があるのに金の話をする。
結局、中身は一緒なんですよ。たとえ金はあっても心は貧しいんです」

親の保有する高級マンションに住み、一流ブランド品に囲まれて生活している対象者も多い。

「最近の患者さんの特徴として、私が身につけている物を観察するというのがあります。『押川さんがつけてるの、本物の高級腕時計じゃないか!!』で話が始まるケースがじつに多いです。

彼らにとって人の中身なんか関係ないんです。親も子も『成功者は成功者の形をしてるだろう』って思ってるわけです。みすぼらしい格好をしてる医者の話なんて聞きもしないんですよ。
『貧乏くさい格好してるヤツは腕がないんだろう』って言うわけです。私なんかは、逆にそういうみすぼらしい人にこそ興味が湧いちゃいますけどね。