入賞できなかった詩
ごめんね素人の私でも才能ないと思うわ

「夢枕」あおきりょう

父が夢に出てきた 別に驚くことはなかった
突然旅立ってから二年以上経って初めてだった
だけど父は話しかけることもなく
僕のことを見て ただ いっしょにいるだけだった

僕が東京に出てから仲違いが激しくなって
母がかけてくる電話に応えているときも
わざと大きな声を出して邪魔をする
だけど そんなことさえもう昔

あの日 普段メールもしない母が
「お父さんが亡くなった」と寄越したとき
あまりにも突然のことに
声を上げることもなくただ
現実を受け止めるしかなかった

コロナ禍で最期を送れぬまま
時間だけがゆっくり過ぎていった

どうして今になって
夢に出てきたのだろう
偶然にしては不思議だし
夢枕に立って連れていくわけでもない
別に自分も呼んではいないし
この世界から去るには まだ早い

まだ生きていくんだからと
思ったとたんに目が覚めた
カーテンを開けた窓から空を見て
僕は何も言わずに手を振った
空のあなたに向かって