許斐が捨を殺す理由は物語全体を見れば分かると思う。一言で言えば「逃れられないぐらいなら死んだほうがマシだから殺してあげた」。
モジカの全体的な筋書きは、不幸な構造に囚われていた主人公がその構造を破壊して自由になるというもの。
その構造には、学園という見せかけの構造と、コンセイサマを中心とする根本的な構造があって、コンセイサマを中心とする構造を破壊しない限り主人公は構造から解放されない(=本当の意味で救われない)。
そしてこの世界観の中では「構造から解放されて自由になる」が最上の結末で、その次に「死んで構造から逃れる」、最後に「構造に囚われ続ける」結末がくる。少なくとも主人公と許斐はこの価値観を内に持っている。
トゥルーエンドもしくはコンセイサマ取り込まれエンド(バッドの一つと花エンド)以外では、許斐が直接的・間接的に殺すか、許斐に促されて主人公が自殺するかのどちらかになるが、
結局のところこれは、そうしなければ捨がコンセイサマの構造に囚われ続けるからといえると思う。
だからこそ、捨は構造からの脱出を諦めた時には許斐に促されてあっさり自殺するし(白い部屋バッド)、トゥルーの途中では許斐に煽られてもまだ諦めていないので自殺しない。
また、許斐には、脱出できなかった捨に対する哀れみか愛情が根本にあると見なすことも出来る。
許斐が捨に愛情を抱く理由は明確な答えがないというか、表情や行動からプレイヤーが読み取るしかないというのが結論かな。
文字として現れる感情がお互いにないからこそ人間関係が築けるというところに話が着地したわけだし、信じるも信じないもプレイヤー次第ってことだろう。
ママプレイのときの文章から血のつながった双子だから愛情を抱かずにはいられないとか、捨を可愛いというぐらいだからブサイクが好きなんだとか、
内面は美しいからという最後の言葉を信じるとか、解釈の取っ掛かりは色々あるが、決定的な記述はたぶんない。利用しているだけという解釈も排除できないようになっている。
許斐以外のヒロインに比べて許斐が分かりにくいのは、物語全体の構造とか、相手を信じるか信じないか、嘘か真かとかいう、物語のテーマや骨組みに関わるヒロインだからだろう。
すっきりとはしないので評価は割れそうな点だけど、分かりにくいのは意図的なことかと。他のヒロインは分かりやすいしね。