「えー、全然わかんなかった!声かけてくれたらいいのに…じゃ、私たちも行きます?」
「うん、せやな。そんでも、せっかくまた二人きりになれたんやし、そんな焦らんでもええかもよ?ほら、美香ちゃんもこないだ言うてたやん『もっと時間があったらいいのに』って」
「ちょっと、やだ、思い出させないで下さい……やっ…………んっん……」
前にトイレで盗み聞いた?のとは比べ物にならない、圧倒的にリアルなキスの音。
心臓が暴れる。
部屋の向こうまではもちろん聞こえることはないはずだが、俺は鼓動を抑えようと必死に、しかし音を立てないように深呼吸した。
そんな健気な努力は、数分もしないうちに無用になったけど。