あにぃとサダの種付けが夏祭りの頃になると聞き、俺は、あにぃにも秘密であにぃの種付け現場に潜入するための綿密な計画を練った。
場所はいつもの山中の小屋の離れに違い無いだろう。時間も前日あたりにあにぃに聞けばわかるはずだ。
俺は前もって離れを何度も訪れて、身を隠すものが無いかどうか下見をし、隅に置いてある何体かの大型の筒型(埴輪)、瓶などの中に俺の体の大きさであればするっと入れること、天井の梁と梁が交差するところに下からの死角があり、これも俺の体なら十分隠れられることを知った。
万一、見つかってしまったときの言い訳も考えた。「あにぃの話を聞いて、実に不用心だと思い、あにぃの護衛に来たんだ。現に俺がこうして身を隠していても今まで気がつかなかったじゃ無いか」そんなことを言えば、トンもシンもあにぃも俺を強く叱ることは出来ないはずだ。
サダの予定はわかったが、警戒するもう一頭のシチについての種付け時期はまだわからない。代わりに俺がノーチェックだった何頭かの乳牛の名が入っていたのは意外だった。なぜあにぃの種付相手に選ばれたのか不思議に思うので、まずはその時に潜入してみようか、と思っている。