小刻みに震えながらずっと泣いていた真っ白の乳牛の肌が、綺麗なピンク色に染まる。あにぃは、「泣いてるのに・・・可哀想だ。嫌だ」と吐き捨てるように言う。
一人の太鼓叩きが、乳牛の股に指を素早く突っ込み、引き出した指をほれっ!と言ってあにぃの鼻先に突きつける。
「確かにさっきまで泣いてたが、お前を見たとたんにすっかりこれだぜ」
「これじゃあ付けないで返すほうがかえって可哀想ってもんだ」
「お前はいつもいつもこうだ。お前がたくさん付けないでどうする。このままだと俺たちに授けられたせっかくのお前の血統が全くの無駄になっちまう」
「たしかにお前のおかげで俺たちの陣地はここまで広がったし良い乳牛もたくさん捕れた。お前はほんとに良くやってる。だが戦いはもうほどほどで良い。これからはこっちの仕事に専念してくれたほうがみんなのためなんだ」
何と言われようが、あにぃは言う事を聞かない。太鼓叩きたちは諦めて乳牛を連れて戻っていった。