ようやく解放されて一人になったあにぃは、肩布・腰布を外し、すっかり丸裸で川に入って身体を洗いはじめた。約束を守ってくれてるんだ、あにぃは俺のために身体を綺麗にしてくれているんだな、と思う。
夕焼けの残照も消えかかり、あたりはもうすっかり夜の闇に包まれ始めている。あにぃはまったく日焼けをしていない。前の戦のときもそうだった。
春の月の柔らかな光が水浴びするあにぃの真っ白で柔らかい身体を照らす。それを見ていると、俺はなんだか変な気持ちになってくる。
このまま木陰に隠れて、あにぃが身体を洗い終わったらすっ裸で出て行って脅かしてやろうと思った。
あにぃが水をいじる音が、川のせせらぎに混じる。ヨタカの鳴く声が遠くで聞こえる。
月や、星や、月明かりでキラキラ光る川面、見慣れたちょっと間延びした春の夜の景色なのに、あにぃの身体がそこにあるだけで、ぐっと締まって美しく見える。
あにぃがあんなに白くて柔軟なのは、ほんとうは人間じゃ無くて、白蛇だからなんじゃないだろうか、とふと思った。前にトンが、白蛇を見ると縁起が良いのだが、自分はまだ見たことが無いと言っていたことを思い出した。
身体を洗うのに飽きて遊びたくなったのか、あにぃは泳ぎ始める。あにぃのプリけつが水面に浮いたり沈んだりする。
あにぃが水の中にぐっと沈み込んだとき、次にあにぃが水面に浮いて来る時は、白蛇に変わってしまうような気がして、俺は急に不安になった。
俺は、「あにぃ」と叫んで木陰から飛び出し、川に向かって突進した。