>>28
あにぃは、驚いて一瞬身構えたが、すぐに俺だとわかると、「おぅ」と声をあげて浅瀬まで来て、両腕を大きく拡げ、俺を受け止めて川に引きずり込んだ。あにぃは人間の姿のままでいた。
あにぃは水の中で俺を無言でぎゅっと抱きしめる。
戦の話をたくさん聞きたい、あれもこれも話したい、と思っていたのに、俺も「あにぃ、あにぃ」しか言葉が出てこない。
俺の背中をあにぃの手がめちゃくちゃに撫で回す。嬉しくて嬉しくて、俺は小さな子供のように小便を漏らしてしまいそうだ。

あにぃは俺の顔を両手で挟んで、じっと俺の顔を見つめる。
「俺が想い出したかった顔だ。戦に行く前にもっとちゃんと覚えておけばよかった」
あにぃは、髪の毛一本一本まで記憶しようとでもいうように俺の髪を指で梳き、俺に横を向かせて、俺の生え際から耳、顎、首筋と、軽く手を触れながら、触れたところをじっと見つめる。
「会わない間にお前はずいぶん大人っぽくなった。賢そうになった」とあにぃは言う。
俺は反対側を向かせられ、正面を向かせられ、軽く唇で触れられたりする。

俺も同じ事をしたくなって、
「俺はあにぃの横顔が思い出しにくて悔しかった。途中まで目に浮かぶんだけど、すぐに馬だの鷹だのに入れ替わってしまってた」と言う。
あにぃは「ああ」と微笑んで、すっと横を向いてくれた。
俺もあにぃの真似をして、あにぃの顔を指でなぞりながら鑑賞する。
あにぃの顔があんまり綺麗で、カッコよくて、触れることを禁じられているものに自分が今触っているような気がして、俺はそっとそっと触った。
それなのに俺は、触っているうちにだんだんと興奮してしまい、突然あにぃの唇にむしゃぶりついた。
あにぃはためらったが、一瞬の後、あにぃもやはり俺の唇に吸い付いて応えた。

水の中なのに、あにぃの身体がすごく熱い。