あにぃは俺の手脚を離して、今度は遠くから俺を眺める。「かわいいぞ、かわいいぞ」と言う。
俺はよく、あにぃと瓜二つだ、今にお前もあんな風にかっこよくなるぞと言われる。
その度に、俺はあにぃほど綺麗でも無いしカッコ良くも無いのに、と思っていた。
あにぃに「かわいいかわいい」と言われると、俺のどこがそんなにかわいいのかな?
どこにいても光り輝くあにぃと違って、俺なんかどこにでも居るただの未熟なガキだろうに、
あにぃはどうしてそんなに食い入るように俺を見る?と思う。
石の上に仰向けに寝せられている俺のところに、あにぃが寄ってきた。
俺の手脚をたたんで卵型に丸め、横向きにして石の上に置く。
あにぃは、動けなくなった獲物をいたぶる獣のように、石の上に置いた俺のまわりをぐるぐる廻る。
あにぃを見上げると、さっきまで優しく整っていたあにぃの顔は、獲物を前にした獣のような歪んだ顔に変わっていた。
俺は少しだけ脅え、でも、あにぃは戦から帰ってきたばかりだから仕方無いんだ、と思った。