>>33
 小屋に入り、あにぃはさっきの歌のウサギのように、俺の四肢を持ってちょっと吊してみた後、床に置いた。

 「お前は本当に変わった」とあにぃは言う。「背もずいぶん伸びた、声だって変わった。ケツに筋もついた。力も強くなったし動きのキレも増した。顔も締まってきた」
 「あにぃが教えてくれた馬と戦いの稽古はトンに見てもらって毎日ちゃんとやってたよ。俺も自分で技を発明してみたよ・・・・ちょっと変かも知れないけど・・・・」
 あにぃと俺は、あにぃが成長するまでは集落一番の馬乗りだった太鼓叩きのトンに馬を習った。あにぃと俺だけでは無く、この集落で馬に向いていそうな子供は皆トンに馬を習う。
 あにぃと俺は年の離れた兄弟弟子のようなものだ。あにぃは、なぜか俺が小さい頃から俺を特別目に掛けてくれて、トンが教えてくれることの他にも、色々なことを俺に教えてくれた。
 あにぃが戦に出るときには、必ず俺に稽古の宿題をくれる。こなしにくく辛い宿題だけれど、あにぃが居ない気持ちの空洞を埋めるにはちょうど良い辛さだった。
 
 「ああ。お前の事だからそれは心配していなかった。俺たちは戦っていたが、お前も俺と同じくらい全身全霊だろうと思っていた。明日は一緒に馬に乗ろう。お前の発明した技を見せてもらおう」
 とあにぃは言う。