>>44
 波の音が聞こえている。天井の隙間から漏れる月明かりが、あにぃの白い裸体にそっと触る。

 魔物は去って行った。

 「こういうことか・・・こういうことだったんだな・・・」
 あにぃは目を閉じたまま、独り言のように言った。色々な考えが頭の中で駆け巡っているようだった。
 「馬のアレに似てるが、馬とはだいぶ違うもんだ」
と、あにぃは言う。
 「もっと吸ってたかったよ」と俺が言うと、あにぃは、
 「まだダメだ。お前も出るようになったら最後の最後まで吸い合おうな」
と言う。
 「俺もあにぃみたいに早くかっこよく白いの出したい。そして一緒に戦いに出るんだ。そしたらずっと一緒に居られるね」
と、俺は言う。
あにぃは微笑み、俺の頭を撫で
 「お前はほんとにかわいいぞ、かわいかったぞ」
とまた言って、あにぃの口で俺の口を塞いだ。

 裸で抱き合っているうちに、あにぃが先に寝息を立て始めた。
 「ほんとに疲れてたんだな。帰ってきたばかりだもの」と思う。綺麗でカッコいいとだけ思っていたあにぃの横顔を、かわいらしく、はかないとすら思う。この人を俺が守らなくちゃと思う。
 あにぃの事がとても誇らしい。そんなあにぃを独り占めにしている自分のことも誇らしい。

 今日はほんとうに不思議な日だった、と思う。
 俺は、一晩中波の音を聞きながら、一睡もしないでずっとあにぃを眺めていた。