あにぃ23才 俺11才 梅雨
BGM:Wayne Shorter - Beauty And The Beast from the Native Dancer album
https://www.youtube.com/watch?v=0PQKnjwlN6g
梅雨があけるころ、集落では年に一度の太鼓叩きたちの集会が開かれる。
集会は3部にわかれ、1部は元馬乗りの太鼓叩きたち、2部は元船乗りの太鼓叩きたち、3部は両方の長老だけが集まる。
重要な議題がある時には、3部には神が降臨くださることもある。集落の重要な決まりはここで決まる。
3部の話題は、この数年ほとんど同じだった。そして今年もそうなるだろうと皆が思っている。
皆の心配は、集落で最も高貴な血統のアニが、さっぱり乳牛に関心を示さないことだ。何代にもわたる計画的な血統づくりによって、この集落はここまで勢力を伸ばしてきた。
優秀な馬乗りたちの血脈は、戦に出る集団を強化するだけの結果にとどまらない。
この集落では、馬に乗るのが不得手な者は船乗りになるが、その強化にも良い結果を及ぼしている。優秀な馬乗りの子孫の中にも、成長するにつれ身体が大きくなり過ぎて馬乗りには不向きの体格になる者は一定数現れる。それが優秀な船乗りのリーダーとして育ってゆくのだ。ここの船乗りが優秀だということは、この集落の豊富な漁獲量を見れば明らかだ。
この集落は、船造りも盛んだ。他の集落でこんな良い船をたくさん持っているところは無い。要は、皆が賢いのだ。
さらに、戦いに勝って捕獲した良い乳牛を運ぶのに適した大きな船を、この集落は何隻も持っている。戦に勝った後、良い乳牛をたくさんこの集落に連れてくることが出来るのだ。
つまり、血統は、この集落の繁栄の基礎になっている。