神がアニをこの集落に授けて下さったときは、皆が大喜びしたものだ。
特別の始祖の血統。奇跡の血統。これで100年は安泰だぞと。
皆の予想通り、アニは奇跡のような若者に育った。戦の天才・・・・智恵や勇気だけでは無い。本気で敵を倒そうとする時、アニの身体はクラゲのように光る。その光は戦う敵を金縛りにして腰抜けにしてしまう。あれは誰にも真似のできないものだ。
ついでの事だが、アニは容姿がとびきり美しい。アニが光を放つことと関係しているのかも知れない。
とにかくアニは集落の宝なのだ。
それなのに・・・・・このままではアニの血統がアニ一代で途絶えてしまいかねない。そろそろ本腰を入れて何か対策を考えなくてはいけない時が来ている、というのが全員の共通認識だ。集会を前にして、あちこちでその話題が交わされている。
「こうなったら縄で縛ってでも大勢で連れていくか」
「いや、あんまり無理矢理でも拗らすばっかりだろう。そうなっては元も子もない」
「俺たちと違って、乳牛は四つ足だからな。アニはまだ気味悪がってるのかも知れんぞ」
「四つ足ってのがかえってたまんねえのにな・・男盛りの年齢なのにまだわからんのかな」
「あんまり特別に育て過ぎたのが失敗だったかも知れん。覚える暇が無かった」
「いや、逆にちょっと早すぎたんだ。アニが白を出したぞって大喜びして、無理矢理あっちに連れてったときのことを覚えてないの?乳牛どもは妙に興奮しちまうし。あれが一番の失敗だった」
「失敗なんて言うなよ。なんとかしなくちゃいけないってときにさ」
「欠陥があるってことは無いのか?」
「それは無い。最近は綺麗な弟抱いて、ビンビン立てては派手に飛ばしてるさ」
と、覗き自慢の太鼓叩きが言う。