>>53
「弟?ナギのことか?」
「弟つっても血のつながりは全く無い。なのに瓜二つ。あれは不思議だな」
「ナギは赤子の頃に川に流れ着いた子で、血統は全くわかっとらんのよ。桃の中に入っとったんじゃ。あの賢さ、すばしこさを見ても、ナギも並の血じゃ無いだろうな」
「ああ。アニの次は、ナギの時代になるだろうな」
「遠いってことは、ナギが乳牛だったら理想的だったんだな。次の世代同士で付けるしか無いな」

「アニとナギは離したほうが良いんじゃ無いか?」と1人の太鼓叩きが言い出した。「ナギの抱き心地が良すぎて、アニのぽがカン違いしてると思う」
「普通は、若い馬乗りの稚児遊びは、乳牛に付ける前の良い稽古になるものなんだがな」
「そうなんだが、ナギに妙な色気があるのがいかん」
「べたーーっと甘えて身体預けて来たりな」
「いや、あれはナギにまだ白が出てないってだけのこと。稚児の色気は一時的なもんだて」
「ああ。ナギに毛でも生えれば、自然とアニがナギを構う気も薄れるだろう」
「俺もそう思う。今離したら2人とも拗らせる。そうなったら・・・それこそ集落の死活問題だぞ」

「トンはどう思うの?」と2人に馬を教えたトンに話が振られる。トンはアニが成長するまで集落一番の馬の名手だったし、流れ着いたナギを川で拾ったのもこのトンだった。
「あいつらがああなったのはつい最近のことだろう?ずっと一緒に暮らしていたことを思えば、それは清らかなものさ。アニはほんとに晩生なんだよ。逆にナギは早熟だと思う。だからあと少しの時間で自然に解決するだろう。もう少し待ってやりたい」

「しかし待つといってもな、何人かの神は、天上にアニを戻したがっておられる。神がいつまで待って下さるか・・」
「ああ。アニにあまり時間が無いというのは確かなことだ」