>>59

 あの不思議な日から今日まで、あにぃと俺は、昼は馬の練習をし、夜は抱き合って過ごした。
 あれから俺たちはお互いの色々なことを発見したし、自分のことについても色々なことを知ったと思う。
 俺はいつ頃からあにぃと仲良しになったんだろう?物心ついた時には俺はもうトンのところであにぃに抱っこされていたと思う。はじめはずいぶん小さかったことだろう。
 
 徹底した血統管理をしているこの集落に、家族という生活単位は無い。馬と同じだと思うとわかりやすい。
産まれたての仔馬は肌馬にずっとくっついているが、半年もして牧草を食うのが上手くなると肌馬から離され、仔馬たちが集まるところに集められ、人を乗せるための訓練を受け、独り立ちする。
 俺たちも同じで、あの乳牛たちが住んでいる丘の上は、肌馬が集まっている牧場と同じようなもの、俺たちの小屋は、馬の厩舎のようなものだ。
 俺たちの小屋は小さなものなのでたいていは一つの小屋に1人が住んでいるが、広めの小屋だと、童(子供)と一緒に住んだりする。
あにぃは元々はトンと一緒に住んでいたが、トンが年とって太鼓叩きになって丘の上に住まいを移して1人になった時、自分の希望で俺を引き取ってくれたらしい。
 
 見せてもらったことは無いが、集落には血統表という絵があって、ほとんどの者の出自ははっきりしているらしい。ところが俺の出自は誰に聞いてもわからない。