あにぃはいずれは天上に召されてしまう運命だと聞いて、俺はたくさん泣いた。あにぃもたくさん泣いた。
近く乳牛のところに行ってあにぃが乳牛たちに種付けすることになる。それが使命だから、と聞いたときも、あにぃのぽを乳牛なんかに入れるのなんて嫌だと言って俺は少しだけ泣いた。
どうして一度に悲しいことばかり聞かされなくてはいけないんだ?と思う。あまりにも嬉しいことが続いていた。今度は悲しいことが続くのだろうか。今のままでいたいのに、時間が止まって欲しいと俺は思った。
でも俺もがんばって素晴らしい馬乗りになれば、風神さまのように天に召されるかも知れない。そうしたら天上であにぃと永遠に一緒に居られる。俺は風神さまやあにぃのように素晴らしい人になろう。俺にはそれしか救われる道が無い、と泣けるだけ泣いた後の今は思う。
俺は計画をたてる。天上では歳をとらないと聞く。あにぃと俺の今の年齢差は少し離れ過ぎていると思う。同じ歳くらいが良い。いや俺は可愛がられるよりも可愛がるほうが好きかも知れないから、あにぃがもし25才で召されたら、俺は26才で召されることにする。あと15年だ。
あにぃが居なくなっても俺は気を抜いてはいられない。それまでに立派な実績をあげて、たくさん種付けをして地上に俺の子をたくさん作る。あにぃの子とぴったり同じ数にするのが理想的だろう。
25才のあにぃは、26才になってすっかり男らしくなった俺を見てきっと腰を抜かすだろう。そして俺にぎゅっと抱きしめられて、俺のたくましい腕の中でたくさん鳴いて、嬉しくて気を失ってしまうだろう。それが俺の使命だ、と思う。