彼女の帰宅と同時に禍々しい臭い。配信からもう一時間は経ってるはずなのに。
「うわっ、くっs……ンン゛ッ、どうしたんそれ」
「う"わ"あ"あ"あ"、す"た"っ"ふ"の"ひ"と"があ"あぁ」
一応私も見とったけど。生にんにくってこんなに持続するんか。
「安心しとき、あとでしっかり本社に圧力かけとくから」
「か、かえ、か"え"て"ち"ゃ"あ"ん"」
可哀想に、ここまで来るまでにも散々イジられたんだろう。
私だけでもいつもと同じ態度でいなきゃ。臭いがなんだ、目の前の美兎ちゃんは変わらないじゃないか。

「大丈夫、私はこんなの平気やよ」
「でもこんなんじゃ、誕生日と同時のキスなんて出来ないよぅ……」

いじらしい彼女の口からは、目眩がするほどのにんにく臭。
1 美兎ちゃんが気になるなら今度にしよか。
2 そんなの気にならん。全部舐め取ったるわ。
3 私も生にんにく食うわ。これでおあいこ。

私の脳裏には、人生で最大クラスの選択肢が浮かんでいた。