そんな擬音が見えるくらい満足げな顔で、お風呂上がりの美兎ちゃんが部屋に戻ってきた。
「ガス、通るようになって良かったな」
「うえぇ、まだそれ引っ張りますぅ?」
大分だぶだぶのパジャマ。おおかた買う時にサバを読んで、ワンサイズ上のものを買ってしまったのだろう。
自動的に萌え袖が形成されていて、それはそれは可愛い姿。
「ふぃー、のぼせたわー」
「お水飲む? 冷蔵庫で冷やしとるよ」
「飲む飲むー」
小さい手にペットボトルを渡すと、美兎ちゃんは両手で掴んで、ぐび、ぐび、ぐび。一気に飲み干した。
オヤジなのかちっちゃい子なのかよくわからん仕草に笑みが漏れてしまう。
「ごちそうさま」
「はいどうも」
私が空きボトルを捨てている間に、彼女はソファに体重を預けていた。
お風呂上がり直後なのに、すでに眠そうな表情。全くこのねぼすけ兎はどれだけ寝るのかね。
「もう寝ますか?」
「……もうちょっとがんばる」
これはあと十五分も持たないパターンやね。まあ落ちたら布団まで抱えてくだけだけど。
「じゃあ……いつもの、いい?」
「いいですけどぉ……あれ結構恥ずかしいんですけど」
抗議は聞かなかったことにして。許可をいただいたから、さっそく始めさせてもらう。
目標は美兎ちゃんのお腹。発射するのは私の顔。……着弾成功。やわっこくて可愛いおへそ近辺に顔を沈める。
「はー……落ち着く……」
「腹で? 楓ちゃんの趣味がわからないわ」
なんてことを言うのだ。ここは小さい美兎ちゃんの唯一『広くて優しくて包み込んでくれる』場所。言わば聖域。
そうは言えないけど。
そして石鹸の匂いとミルクのような彼女の匂い、加えて少しだけフェロモンを感じてとても安らぐんだ。
「美兎ちゃんには分からんよ……この良さは」
「まあね。別に喜んでくれるならいいですけど。いいこいいこ」
本日は頭を撫でてくれるサービスまで付いた。そんなことされたら幸せが振り切ってしまう。
「んふふー、やっぱり甘える楓ちゃんも可愛いですね」
「んー……」
そんなこと知らん。こんな風になる原因は、いい匂いの美兎ちゃんやし。
鼻をぐりぐりと押し付けつつ、深い呼吸を繰り返して甘くて華やかな匂いを堪能する。
頭上を往復する手のぬくもりも私の幸せを加速していく。
多分、今私は世界で一番幸せに囲まれている人間なのではないか。そう考えると一層止まれなくなる。
すんすん。ぐりぐり。すんすん。
決して邪な気持ちでやっているのではなく、私の本能が求めて逆らえないだけだ。
それに。
「楓ちゃん……わたしもいつもの、いい?」
こうしていると、すっかり目を覚ました兎さんが潤んだ目でお願いしてくるんだから、おあいこやんな。