ある朝、月ノ美兎が気がかりな夢から目覚めたとき、自分がムカデ人間の先頭に変わってしまっているのに気づいた。
彼女はぷにぷにとした横腹を下にして横たわり、首を少しひねると、何人もの白い3Dモデルが自分の尻から列をなしてうごめいている後ろ姿が見えた。
3Dモデルたちは物理演算が入っているのかいないのか、床やベッドからすっかりずり落ちそうになって、まだやっともちこたえていた。
ふだんに比べると情けない、しょぼくてくっついている左右の指が自分の眼の前にしょんぼりと映っていた。
「……これ、寝起きドッキリってやつですか?」と、彼女は思った。そう言いながらHMDを探るが反応はなく、彼女はこれを夢だと断定した。空間の全てが、知っている気がするあいまいなもので構成されているような気がするからだ。
夢だとわかると、美兎に悪心が生じた。
「どうせ夢ならうしろの3Dモデルが全部知り合いの方が楽しいですよね」
そう念じた瞬間、マネキンじみた3Dモデルたちが一瞬でさまざまな人間へと変じる。リアル、バーチャルおかまいなし。
挙動も一律のものではなく、声にならない声をあげたり、目を見開いて顔を青ざめさせたり手を振ったりと様々だ。
「うわっ、罪悪感やっっべぇ〜〜……」
そう呟きながら自分の尻にくっついているのがだれかと見れば、それは同じにじさんじでJK組であり、かつ彼女のパートナーでもある樋口楓であった。
楓は美兎が自分を見ていることに気づくと、半目でなにかを訴えるように首を振った。
ぞくりと美兎に再び悪心が生じた。これは夢、これは夢。

「寝小便しました……」
「はぁっ!?うそやろ!?」
「まじまんじです……」
「これはさすがにあかんわ。嫌なみとちゃんの回答ができてしもた」
「エー大変反省しております」
「……、いや、いいんよ直さんくて。これから私が毎日おむつつけてあげるからな……!」
「ちょちょちょちょ何言ってるんですか!? かえでちゃん!?」
「おねしょしちゃうような子は赤ちゃんだけやから、ほらみとちゃん、横になって? 最近のおむつは薄くってね、昼間着けてても全然わからへんのよ?」
「はぁっ!? わたくしにおむつで45秒踊れと!? それローターよりマニアックじゃないですかね……」
着けた。踊った。プリン。