ラインが分からなくなっている。踏んでいいライン、越えちゃいけないライン。ライン交換してないけど。
こんなはずじゃなかった、とまでは言えない。仲良くなりたかったのは本当だ。
でもまさか、こんなにハマり込むなんて。
みとちゃんが美味しそうにご飯食べてると、味なんてよく分からんくても嬉しくなる。
みとちゃんの鼻唄を無限に聞いていたい。音程取るのほんまに上手ですごい。
みとちゃんが凛先輩やえるちゃんと仲良く絡んでると、どうしようもなく寂しくなる。
営業に引きずられてるだけだって思い込む。
ほのぼのした百合が好きだけど、かえみとはほのぼのしてない。湿度と質感と生活感こそがかえみとの売りだ。今更アイルナやえーそらみたいな百合はできない。
だから、嫉妬とかそういうのも質感を高めるため。営業のため。りんみと、みとえる、ごがみとに本気で嫉妬してるわけないし。ほんまに。
そうやって営業を続けた結果、今もみとちゃんは私の隣に寝てる。
あの夜以降、今更床で寝るのも変で、みとちゃんと寝るときは大体同じベッドで寝る。
無防備な寝顔。無意識のガチ恋誘発ムーヴといい、みとちゃんは自覚が無さすぎる。
みとちゃんだって薄々感付いているはずなのだ。私が本当に「ソッチ」側ってこと。
なのにこんなにあどけない寝顔で爆睡してる。たぶん、ちょっとやそっとじゃ起きない。
……………………。
小さい体を抱き締める。そっと髪に鼻を埋める。
みとちゃんのかたち。ぬくもり。なんとなく甘いにおい。
これも営業、営業やから。みとちゃんの質感高めてこ。
そしてポタクを弄ぶのだ。「寝てるみとちゃんめっちゃぬくい」とか「みとちゃんの頭の形めっちゃきれい」とか言って。頭の形ってなんやねん。
営業営業。もうちょっとしたら離そ。でももっとみとちゃんの質感を確かめて……





朝起きたら楓ちゃんに抱き締められていた。えっ、えっ?
あ、もしかしてこれも営業?配信で「楓ちゃん抱き枕とか抱いて寝ます?」→「そうやけどなんで?」→「いやー、前泊まったときわてくし抱き締められてたんですよね」ってこと?
なるほどー。さすが平成最後の百合脚本家。目の付け所が違う。
でもごめん、楓ちゃん。トイレ行きたいから先に起きるね。次の配信でちゃんとぶっ込むから許してね。

次の配信でぶっ込んだら大火傷した。かえみと界隈は大盛り上がりした。わたくせは楓ちゃんにお説教された。営業じゃないのに抱き締めて寝てたの何だったの。