――でろーん。
ソファの上で丸くなって寝ている楓ちゃんが見える。文字通り体を丸くして。気持ち良さそうにすやすやと。
銀髪のてっぺんには銀色の三角形、ふわふわもこもこの猫耳。あ、ぴくっと動いた。かわいい。
パジャマの隙間からは銀のしっぽ。ソファの下までだらんと垂れて、たまにふわふわと揺れている。かわいい。
気のせいか、むにゃむにゃ言ってる声の合間に「なー」とか 「にー」とか聞こえてくる。うん、かわいい。

今日のガチャアイテムは『にゃんこセット(N+)』だ。正直、それを私に使うか彼女に使うか本日ほど迷った一品。
私に使ってそのかわいさでめろめろにしてやるのも捨てがたかったけれど、最終的に楓ちゃんを対象とした。
今ではこの選択で良かったと思う。絶対に見る側が見られる側よりも満足度は高いから。これ無茶苦茶かわいいから。

「楓ちゃーん、そろそろ寝ますよ……」
とか言いながら、無防備な銀髪を撫でる。「んに……」卑怯なほど甘ったるい声を出して身をよじる彼女。
もういいか。ベッドまで誘導せずともここで可愛がってしまおうか。だってこんなに気持ち良さそうなんだし。
「んにゃ……美兎ちゃん。ごめん、寝とった」
猫の手で目を擦りながら身を起こす姿は、必要以上に猫さんで。あぶねえ、私が飛び掛かるところだった。
起きてしまったけれど、まあいいか。頭を撫でる手は止めずに、てっぺんから後頭部に沿って手を這わす。
「んー、にひひ。美兎ちゃん、くすぐったいよ」
「たまにはいいじゃん、ゆっくり撫でさせて」
あくまで平静を装いながら。猫耳が気持ち良さそうにでれんと寝ても、それに気を取られることのないように。
耳と耳の間、おでこの上をわしゃわしゃと撫で回す。少し力を入れて、指先の感触が彼女に伝わるように。
「んゃあ、なに、みとちゃ、そこ、気持ちいい」
「はーい、大人しくなでなでされててくださいねー」
空いたもう片方の手で、背中の中心線を大きくさする。肩の高さから腰の辺りまで、ゆっくりゆっくりと。
すると楓ちゃんは心地良さそうに力が抜けていって「んに……」なんて声を漏らしながらふにゃけていった。
頬っぺたに手のひらを当てて、顎のへんまでくすぐるように撫でていく。彼女は気持ち良さそうに瞼を閉じて、
――ごろごろごろ。ごろごろごろ。
そんな喜びの音をたてるものだから私は嬉しくなってしまって。
ぴたん、ぴたん、とソファを叩くテンションの高まったしっぽを見て、更に庇護欲が湧いてきてしまって。
「美兎ちゃん、私何だかぽわぽわする、へんな感じ」
そりゃそうでしょうね。これらは楓ちゃんが教えてくれた猫さんの弱点なんですから。
「撫でてもらうと、どきどきが止まらんよ。もっとしてほしい」
はいはい。それじゃあとっておきの場所を撫でてあげますからね。

しっぽの少しだけ上の部分。付け根の上辺りを優しくかりかりかり、と引っ掻いてあげる。
「んぁ、おあ、にゃ、にゃにこれ。むずむずする、ぞくぞくする」
隣に座る私にしがみついてくる楓ちゃん。ふふ、怖くないですよ、ちゅーしながら撫でてあげますね。
はむ、ちゅっ、ちゅるっ。夜の営みの邪魔にならないよう女神が気遣ったのか、舌はざらざらしていなかった。
とんとん、とんとん。腰の中心部を軽く叩いて、たまに撫でて。その度にぴくん、ぴくんと跳ねる唇を楽しんで。
「うぁ、おぁ、んにゃ、らめ、ちからが、ぬけっ」
私にもたれるように脱力していく彼女。こんなに効果があるとは思わなかったけれど、作戦は大成功だ。
ふーっ、ふーっ、と息が荒くなった彼女のおしりに目をやると。
「ねぇ、楓ちゃん。パジャマまで染み出してますよ」
「んなぁ……わかんない、みとちゃんのてが、きもちよくて、どきどきして」
ふとももにすりすりと頬を擦り付ける姿は、いつもの肉食獣とは違って本当に人懐っこい猫さんみたいで。
「もっと気持ちよくしてあげるから、そのまま撫でられてていいですよ」
「んにゃあ……みとちゃん、おねがい……」
手のひらをゆっくりと湿った布へと近づける。楓ちゃんは知ってか知らずかふりふりとおしりを動かしていて。

――くち。ぐちゅ。
「んっ、んんっ、んにゃっ」

今夜は彼女がネコになった夜。ご主人様としてしっかり可愛がってあげますからね。