変なアイテムを引き当てた。『養老フィールド(R+)』、効果は『液体なら何でも酔っ払う体質になる』とのこと。
いや、これ猫型ロボットの秘密アイテムと同じ効果のバッタもんじゃないか。女神、手ぇ抜いたな。
楓ちゃんが酔うとどうなるのかは未知数だが……そうだ、べろんべろんにしてベロンベロンしてやろう。
酔わせたいのはどちらですか、と画面に選択ボタンが出る。そんなの私に決まってるだろ、と『自分』を選択。

「ふぃー、あったまった」
ほこほこな湯気を携えた、お風呂上がりの楓ちゃん。パジャマを着ててもどこか色っぽいのは不思議だよなぁ。
「ね、冷たいジュースありますよ。どうです、お風呂上がりに一杯?」
「おー、飲みたい。乾杯しよ」
はいちょろい、これで作戦完了。あとは言葉巧みにがぶがぶ飲ませれば酔っ払い女の出来上がりだ。
「「かんぱーい」」
これはただのマンゴージュース、けれども彼女にとっては正気を失わせる魔性のリキュールなんだ。覚悟しろ。
「ぷはっ、冷たーい。もう一杯もらってもええ?」
どうぞどうぞ、何杯でも飲んで下さいな。ぐへへ、自ら罠に嵌まるとは愚かな女め。

「あー、美味しかった。それじゃ美兎ちゃん、歯を磨いて寝よか」
おかしい。この女は一向に酔いが回っていないようだ。それだけじゃなく、私自身の様子も……おかしい。
「美兎ちゃんどうしたん、顔が真っ赤になっとるけど」
「え、べつに、なんれもないれしゅよ」
視界がぼやける。頭がふらつく。呂律が乱れる。もしかしてこれ、私が酔っているのではないか……?
『酔わせたいのは』って、もしかして酔わせる対象の選択だったのか……!? あ、だめだこれ。頭働かんわ。

「どうしたん、ふらふらして。とりあえずお水飲もか」
その行為が逆効果になるとも知らず、楓ちゃんは私の口に半ば強制的に水を流し込んでいく。
「なあ、大丈夫なん? しっかりしてや」
ああ、もうだんだんムカついてきた。私がどんな思いでこんな目に遭ってると思ってるんだ。
「美兎ちゃん?」
うるさいうるさい。いつも一方的に私のことをいじり倒して。私ばっかり気持ちいい目にあわせて。
「え、気持ちよくなってるんならええやん」
んなわけないだろ。私だって楓ちゃんを気持ちよくしたいんだ。してもらうのと同じくらい、したいんだ。
「えっ、え、私にされていやだった?」
嫌なわけないだろ。ただこっちにもお礼をさせてほしいだけだ。たまには楓ちゃんの可愛い顔が見たいだけだ。
「うん……ごめん」
ああもう、謝るな。良かれと思ってやってるのは知ってるから。だから時々は攻めさせろ。それでいいから。
「……うん、わかった」

ぼうっとする頭に聴こえる布擦れの音。気が付けば、楓ちゃんが一糸纏わぬ姿で私を抱きかかえていた。
「……いいよ、美兎ちゃんの好きなように攻めてくれても」
しおらしそうに呟く彼女。その刺激的な光景に頭がいくらか覚醒して、我慢なんてできなくて。
――はぷっ、れる、れる、むじゅ。
無我夢中でむしゃぶりついた。てまも、ふらふらな脳でもわかる。こんな独りよがりな愛撫が気持ちいいはずない。
「んふ、んふふ、美兎ちゃん、気持ちええよ。すっごく嬉しい」
嘘つけ。せめてもっと冷静な時だったら上手くできるのに。くそ、楓ちゃんを思いきりぐちゃぐちゃにしたいのに。
「うん、身体はくすぐったいだけかも。でも、嬉しいから。美兎ちゃんが求めてくれるのが嬉しくて」
本当? 本当にそう思ってる?
「うん、ほんま。天にのぼるくらい嬉しくて、気持ちいい」
そうか。それならいくらでもべろんべろんするから、楓ちゃんは気持ちよくなって。
「うん、嬉しい、嬉しいよ。美兎ちゃん、ありがとうな」

翌朝。
昨晩何をしてたのか、さっぱり思い出せない。酒ってこんなに恐ろしいものだったのか、と少し震えた。
「あっ……美兎ちゃん、起きたん?」
げっ。そうだ、結局この女を酔わすことができなかったんだ。昨夜は一体どうなってしまったのだろうか。
「美兎ちゃんの攻め、凄かったよ。めちゃくちゃ気持ちよくて気が狂うかと思った」
そ、そうなのか? それはそれは、でへへ、よくわからんがうまくいったようで何よりです。
「ん。すごく良かったから、またたまに攻めに回って欲しいな」
まあ、楓ちゃんがそこまで言うのならね、たまにはサービスしてあげてもいいですよ。えへへ。

頭を優しく撫でられながら、自覚の無い勝利の美酒に浸る私だった。