「みとちゃん一緒に……な?」
などと珍しくしおらしいことを言うもんだから、嬉々としてベッドに潜り込んだんですが。
「楓ちゃん何してんの」
「みとちゃんの体まさぐってる」
「早く寝て」
「やぁだ」
なんだこいつ……。

でろーん、と投げ出された熱い身体に押し潰されている。力が入らないのか全体重をかけてのしかかってくるから、マスクと枕に押し付けられる鼻も口も満足に呼吸できない。
火傷しそうなほど熱が込められた吐息に、しんどさのせいかため息が混ざって、逃げられない耳に何度も何度も浴びせられる。
それだけでなんかもうアレなのに、楓ちゃんはベッドと私の体の間でもぞもぞと腕を動かしていた。
「マジでどしたの」
「病気って、菌を吸い込むか粘膜の接触で感染るんやろ」
「らしいね」
「だからキスはせんし、みとちゃんマスクしてるし、私がみとちゃん触るだけなら感染らないから大丈夫」
「なるほどなるほど……いやいやいや」
楓ちゃんの両手が裾から侵入してくる。いつもより熱い掌がお腹に当てられたと思ったら、突然楓ちゃんが思いっきり体重をかけてきた。
掌の形を押し付けるように。強くて、熱くて、まるで焼き印みたいな。
ぞわりと背筋が震えた。いけない。自分の妄想でスイッチを入れるのはまずい。
でも、そんな私の反応は密着している楓ちゃんには丸わかりだった。
「ええやろ?」
気だるげで、少し掠れた低い声は、悲鳴を上げそうになるほど色っぽくて。体も心もあっさり楓ちゃんに降参してしまって、後はなけなしの理性だけ。
「病人なんだからちゃんと休んでってば」
「かわいいみとちゃん見るのが一番楽しいし、癒しだから」
「寝ろ!」
「やぁぁぁだ」
じわりじわり。楓ちゃんの手が下腹部を滑り落ちていく。
「激しくは、ちょっとできんけど。ゆっくりやけど、ちゃんと気持ちよくするから」
「待って待って、普段からねちっこい楓ちゃんがもっとねっとり触ってくるとか私泣いちゃいますよ」
「涙と涎でマスクぐちゃぐちゃにして?マスクつけたみとちゃん、なんかいかがわしいし」
「言いがかり過ぎる……」
楓ちゃんの中指が内腿を撫でた。もうだめだ。
「眠くなるまでかわいいとこ見して?」

その後、ねちっこくいじめられた私はもどかしさと気持ちよさに顔面をぐちゃぐちゃにし、その度に楓ちゃん用に用意したポカリを口移しで飲まされ(粘膜接触してんじゃん)、気が付いたら朝を迎えていた。
楓ちゃんは回復していた。
なんだこいつ。元気になってよかったけどさぁ。