「みとちゃん。おはよう」

朝。みとちゃんを起こす。今日は特に予定はないが、朝は起きたほうが気持ちがいい。
少々ぐずっていたみとちゃんも、ゆるゆると頭をなでているうちにだいぶ目が覚めてきたようだ。

「かえでちゃん。ちゅーしませんか」

寝起き特有のまったりとした口調でみとちゃんが言う。朝からこんなにストレートに言われるのも珍しい気がするが、もちろん悪い気はしない。撫でていた手を止め、ゆっくりと顔を近づける。

「だめでーす」

あと少しというところで額に手を当て止められる。

「わたくしからするんですー」

ベッドの奥に転がると、空いたスペースをポンポンと叩いている。なんだか面倒な気配がするが、断るのはもっと面倒くさいだろう。素直に寝ころんでみとちゃんの方へ向く。

「あおむけー」

逆らわず指示通りに。みとちゃんが体を起こす。

「はい。ちゅー」
「ぐぇ」

そのまま私のお腹にお腹から倒れこんできた。

「ちゅー」

私のお腹の上でバタつくみとちゃん。私たちのお腹の間では、同じ顔をしたおばちゃんたちが朝から熱烈なキスをしている。
おばちゃんがでっかくプリントされたロンT。以前私が来ていた時に、かなり気に入っていたようなのでおそろいのものをプレゼントした。
おそろいで着て鏡の前で並んでみたときに、あまりの圧に二人で笑い転げた。それ以来着るのが面白くなってしまい、もっぱらパジャマとして重宝されている。

「ぷはぁ」

豪快な息継ぎ音とともに、みとちゃんが起き上がる。

「仲ええな。この二人は」
「はい。昨日も私たちを放って、ベッドの下で二人で長い間絡みあってたみたいですね。わたくしは最後まで覚えていませんが」
「ごめんなさい」

確かに昨日は少し盛り上がりすぎたかもしれない。

「大変ですよ。かえでちゃん」
「どしたん?」
「わたくしたちの部屋なのに今この部屋で一番仲がいいのはおばちゃん達かもしれません」

それはそうだろう。片方が片方のお腹の上で暴れる二人では、その間ずっとキスしていた二人に勝てそうにない。

「正義がおばちゃんに負ける日が来るのでしょうか」

私のお腹にまたがったみとちゃんが今度はゆっくりと体を倒す。胸が重なり、顔が近づく。

「負けてまうかな?」
「楓ちゃんの頑張り次第じゃないですか」

顔が近づく。

「じゃあ。負けへんように頑張りまーす」

重なる。