"極寒!氷結塔の主"
ミ「ささささ寒いぃいいい!!」
ミ「なによこれ!? 寒すぎるわよ!?なんでこんなことになってるのよ!?」
主「ジブリールの衣装は、防寒とは無縁だからなあ……」
ア「マスターもすごく寒そうです……」
主「俺もノー防寒で送り込まれたからなあ。あのほにゃらら天使に」
ラ「『火急緊急の事態でしたの! 説明はそこの清純派天使がしてくれますですの!』」
ア「へくちっ」
主「大丈夫か? アル」
ア「あ、す、すみません」
主「いやいや。こんな極寒の地で、そんな薄着でいたらくしゃみくらい出るって」
ア「皆さんに今回の事件の説明をして、防寒装備を調えてからこちらに来ようと思っていたのですが……」
主「作戦室に行った途端、いきなり転送されてしまったな」
ア「……はい」
ラ「『このあとすぐにHERA特製の貼るカイロを大量に送るですの! それを全身にバシバシ貼れば問題解決ですの!』」
ラ「低温火傷にはご注意ですの〜♪」
主「変なところで親切だな?」
ミ「親切の方向性をまちがえまくってるわよ!」
レ「はあ、寒いわ……すごく寒い」
主「(先輩の顔色が心なしか悪い気がする。 元々色白なだけかもしれないけど……)」
レ「はあ……寒い」
主「(うん、白いな……寒さのせいでもじもじ擦り合わせている太股 とか両腕でぎゅっと中心に寄せられている豊かな胸元とか……)」
主「(いやいやいや。胸は肌の白さとは関係ないだろ。 俺、しっかりしろ!)」
主「(しかし……。この先輩の妙に色っぽい仕草は、 寒さのせいなのか? どうなんだ???)」
レ「…………」
主「(あ、目が合った)」
レ「…………(くす)」
主「(しまった、やましい視線を向けていたのがバレてる!)」
レ「ねえ君……」
レ「私、すごく寒いの……あたためてくれる?その君の体で……」
ミ「待て待て待て待てぃっ」
レ「あんっ」
ミ「何どさくさに紛れてやってんのよ。まったく油断も隙もありゃしない!」
ラ「『寒さによる命の危機が、生殖の本能を刺激してるのかも しれませんの〜あとで交尾するがいいですの〜』」
ミ「そこ! 気安く推奨すんな!」
ラ「『とにかく、そこに巣を作って暴走している電脳モンスターを 倒しまくれば、サーバは正常化されますの!』」
ラ「『説明はそこのぼけぼけ天然清純派天使にお願いするですの! これ二度目ですの!!』」
ア「あっはいっ、すみませんっ」
ア「ここから見えるあのアイスクルタワーに、この事態を引き起こしている電脳モンスターが棲んでいます」
ア「ここの電脳モンスターたちは、アイスクルタワーから電波を出してサーバの冷却機能を暴走させ……」
ア「自分たちの住む領域を広げようとしているんです」
ア「他のサーバにも出没して、アイスクルタワーを建てようとしている彼らの存在が報告されています」
ミ「つまり……このままあいつらを放置しておけば、他の仮想空間も氷の世界になってしまうってこと?」
ア「はい」
レ「氷の世界……ロマンチックではあるけれど、不便であることは確かね」
レ「まあ、君とふたりきりで氷の世界で世界が終わるのを見届けるのも悪くないかしら?」
ミ「妄想はそれくらいにして、さっさとそいつらを倒すわよ」
レ「情緒がないわね……その感性、作家としては致命的なんじゃないの?」
ミ「うっさいわね!! 〆切もあるし、何より寒いのよ!!」
主「俺も賛成だ」
主「(やっぱりジブリールの標準装備であるスク水には、 夏が似合うしな。いや冬のスク水も乙なものだけど)」
主「(春夏秋冬にはしゃぐジブリールたちを堪能するためにも、 これは可及的速やかに解決すべき案件だ)」
ア「わたしも賛成です。それにこたつがセットでないと、寒くてもあまり楽しくありませんから」
ラ「『タワーには先行で調査しているジブリールがいますの。 その天使と合流して、とっととサーバを正常化させるですの〜』」
主「わかった。その天使と合流しつつ、電脳モンスターを倒しまくって、このサーバを沈静化しよう」
主「よろしくな、みんな!」
ア「はいっ。頑張りましょうね、マスター」