>>886
古代の人びとの前論理的な心性において、表象は容易に実体と同一となる。そこに祝告や呪術が生まれる。
祝はいのりであり、祝告は神霊に対する行為である。
呪はのろいであり、呪術は対者に対する欲求の方法である。
いずれも表象がそのまま実体に外ならないという、融即の原理にもとづく行為である
 祝と呪とは、ともに兄に従う字である。
兄は〔説文〕に「長なり」とあり、口を以て群弟を指導するものとするが、字は?(さい)を戴く人の形で、祝告する人の意である。
ゆえに祭壇の形である示の前にあるを祝という。国語の「祝ふ」はもと「斎(いは)ふ」であり、心を清めて祈ることをいう。
祝には祝福のほか、祝祷の義があり、その音は呪に近い。
白川静著 『漢字の世界』より
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