実質賃金を算出するために、名目賃金(hourly earnings)と消費者物価指数(CPI)を組み合わせて使うことは可能です。
しかし、**各国ごとの比較を行う際には注意が必要**です。
その理由は、以下のポイントに基づきます。

### 1. **異なる消費バスケットとCPIの計算方法**:
- 各国のCPIは、異なる消費バスケットや計算方法に基づいており、国によって生活費や消費習慣が大きく異なります。
そのため、CPIで調整した実質賃金の数値が必ずしも直接比較可能であるとは限りません。
ある国では、特定の商品の価格が賃金に大きな影響を与える一方、別の国ではそうでない場合があります。

### 2. **購買力平価(PPP)**:
- 国際的に賃金の購買力を比較する際には、購買力平価(PPP: Purchasing Power Parity)を用いることがあります。
PPPは、異なる国で同じ種類の財やサービスを購入するために必要な相対的な通貨価値を考慮したものです。
実質賃金の国際比較には、PPPを考慮する方が正確です。

### 3. **異なる生活水準と物価の差**:
- 各国で生活費や物価が異なるため、同じ実質賃金でも生活水準が異なる可能性があります。
例えば、実質賃金が同等であっても、一部の国では生活費が非常に高く、他の国では低い場合があり、実質的な生活水準には大きな差が生じます。

### 4. **統計の不一致**:
- 各国の統計機関が提供するデータは、定義や計算方法が異なるため、直接的な比較には限界があります。
名目賃金やCPIのデータが完全に統一されていない場合、比較の信頼性が低くなります。

### 結論
実質賃金を使って各国間で比較することは可能ですが、これを行う際には上記の制約を考慮する必要があります。
**名目賃金とCPIのみで算出した実質賃金をそのまま比較することは、国ごとの物価や生活水準、消費パターンの違いを無視することになるため、慎重な解釈が求められます**。
より正確な比較をするためには、購買力平価(PPP)や他の補正データを考慮することが推奨されます。