メイズハムスターの朝は早い。
朝5時になると同時にログインし、メイズに潜り始める。

―何故、そんなに早く潜るんですか?メイズの仕様を知っていますよね?

「好きでやってる事ですから。後顧の憂いなく、サークルのみんなが毎日サークルPを10P貰える。それが僕の喜びなんです」

3択の中から即座にイベントマスを選択するその手つきに迷いはない。
なるべく戦闘を避け、速やかにボス戦へと辿り着くその手腕は正に匠の腕前だ。

「こんなものは慣れですから。やってる内に誰でも出来ますよ。まあ、やろうと思う人は少ないですけど」

苦笑いしつつも、その顔はどこか誇らしげだ。

「そもそもね、メイズハムスターが自我を出す事自体、未熟な証拠なんです。自分はメイズ回ってますなんてアピールして
誰が幸せになりますか?サークルメンバーは負い目を感じるかもしれない。自分もしなきゃと焦るかもしれない。
何よりハムスターにメンバーの貴重なサークルPが集中して、他のメンバーが10Pにならないかもしれない。それが僕には耐えられない」

―ですが、それが普通のサークルなのでは?

「ええ、そうです。毎日10P配るつもりなら、アピールするのもありだと思いますよ?でも、僕にそんなつもりはありません。
あくまでみんなが10Pになる為の手助けを暇つぶしがてらしているだけなんです」

そう語る口調に、淀みはない。彼にとって、メイズ周回は本当に唯の暇つぶしなのだろう。

「ハムスターとサークルのみんなの協力があって、初めてみんなが10P貰えるんですよ。それって素敵な事だと思いませんか?
ハムスターだけで10P貰える。確かにそれが一番楽でしょう。しかしそんな歪な関係は必ず破綻します。ベストが常に正解とは限らないんです」

その瞳はどこか憂いを帯びていた。もしかしたら、彼の実体験なのかもしれない。

「まあ、そんなわけでね。ハムスターとサークルのみんなが持ちつ持たれつ、無理ない範囲でメイズを周回する。それが一番長続きするんですよ。
そうやって、僕とみんなが揃って初めてサークルPが10Pいくんです。それで良い。いや、それが良いんです」

そう笑って言ってのけた彼は、ひたすらマウスをクリックする。インタビューが終わってもなお、彼の瞳は常にモニターを見つめていた。

プロフェッショナルX〜ハムスターの流儀〜より