マク石マク
イズマク要素有り


クリスマスイブの夜20時を過ぎる頃ヴーンゴールヴもいつもより多少静かやねんな
イッシーは自分を待つ家族があるわけでもなくいつも通り粛々と業務をこなすのや
昼間は視界いっぱいに広がる青く高い空も今は所々灯はともるものの静かに暗く沈んだ闇の色やねん
端末を見る目を休める為かその暗闇に視線を送り無言で見つめる上官の美しい横顔をチラリと見ながらこの方はクリスマスの夜をどのように過ごしてきたのかとイッシーはふと気になったのや
「ああ、ファリドの家にはけたたましいほど華美な装飾が毎年施されていたな…正直私はアレが苦手だった
聖人の生誕を祝う日らしいが慎ましさや壮厳さもなく本来の目的も遠の昔に忘れ去られているのだろう」
准将から返された言葉には何故か怒りの感情が含まれているような気がしてこの方はクリスマスがお好きでないのだなとイッシーは黙り込むねん
准将は一瞬の回想に耽けて今はもう邸宅にいない養父が聖なる夜とされる日にさえ深夜自室に呼び付けアルコール混じりの息でいつも以上に激しく自分を陵辱するたび
己の肉体と魂が更に穢れていくような気がしたのを思い出したのや
余計な事を聞いたかと自省したイッシーが気分転換にお茶でも淹れて差し上げようと踵を返した時不意に准将のクスっと笑う声が聞こえて振り返るで
「何でしょうか?准将」
「いや、お前がクリスマスの事を聞いてきたからてっきり私にプレゼントでもくれるのかと期待してしまった」
「欲しいのですか?」
「ああ、欲しいとも」
准将の長く逞しい腕がいつの間にかイッシーの腰に回されていつ見ても眩しい程美しい上官の顔にいたずらっぽい表情が浮かんでいるのをイッシーは今更ながらに愛しくこの上なく大切なものに感じるのや
今はこれしか差し上げられませんと眼下にある白く秀麗な頬に手を伸ばしたイッシーがその薄い唇に啄むようなキスを落とそうとした瞬間ー