>>30
きゅんからの電話で起こされた。今夜そちらに行くつもりだったが、たぶんいけなくなってしまった。と。
「新しい男でも出来たのか?」と精一杯冗談のように軽く言ってみたが、俺の口調はひきつっていたのかも知れない。きゅんは笑わなかった。気まずい沈黙があった。しまった・・と思った。
「今夜、Jに女にしてもらって、Sに男にしてもらういます・・あ逆かな?3人でゆっくり相談してからだけど、案外今回は、JのほうもSのほうも、きゅんが男役やるのかも・・フフ」ときゅんは返した。
「・・・・・・・・・・」数秒後にようやくきゅんが何を言ったのかを理解し、
「・・ああ、魅力的だろうな・・楽しみだ」と言うのがやっとだった。きゅんは一瞬、俺が虚をつかれたのが面白かっただろう。甲高い声で笑った。

・・・きゅん、俺はもう駄目になってしまう寸前なんだ。からかわないでくれ。と俺は思う。
彫像の奴だったら、あんな言葉は絶対に吐かないだろう・・俺は自己嫌悪する。
しかし待てよ、あの頃のあいつは完全な彫像だった。今のきゅんでも自分から手出しはできず、奴が落としにくるのを待つしか無かったろう。せいぜいhttp://i.imgur.com/gEstTZ9.jpg で気を引いてみるくらい。
今のヤツも十二分に魅力的だが、もうあの頃の鋭角は無い。想定の範囲内の魅力ってやつだ。それならきゅんの性格からいってその気があれば自分から全力でかかっていくだろうが、そういう兆候は聞かない。
俺にとって幸いな事に、ヤツときゅんは、ほんの少しタイミングがずれたのかも知れない。危なかった。あの頃の奴と今のきゅんが出会っていたら、ひとたまりも無かったろうな・・・と思いながら、俺は少しだけ落ち着きを取り戻す。