>>70
夜に、きゅんが電話をしてきた。メモを見ながら読み上げるように言う。
「ご協力ありがとう。見事当選されたので後日粗品をお送りさせていただきます。」
「性格:あなたはその透き通った瞳のままで、消えそうに萌えそうなワインレッドの心をまだもて余しています」
「愛情:忘れそうな思い出をずっと抱いているより忘れてしまって下さい。もっと何度も抱き合ったりずっと今夜を揺れあったりしたら、あなたは今以上、それ以上愛されます」

俺は吹き出した。「それはきゅんが生まれる前に流行った歌謡曲の歌詞じゃ無いか。」
「バレたか。そうです。小さな子供の頃、なぜか母が僕に子守歌がわりに歌っていました。サビの部分だけピックアップして繰り返して」
「透き通った瞳の中で、ワインレッドの心を持てあましているような子供だったのかな、きゅんは。しかし十二分に愛されていたろうに
・・今以上それ以上愛されるのに・・とは・・いったいどこまで愛されようとしていたんだ、きゅんは・・」

「僕、飢えてます・・すごく飢えてます・・あなたが僕の写生をしてくれて嬉しい。手元に絵がありますか?あったら撫でてやってください。今、どこを撫でてくれてるの?」きゅんの声が変わってきた。
俺も「俺のほうがもっと飢えてる。きゅんが去ってからずっとだ。もう限界だという位、飢えている」と言う。