もちろん、話を聞いてほしいという人がいれば、徹底的につきあう。

「東北の震災で、浮かない顔をしたかたがいて、もし悩んでいることがあれば話してくれませんかと言ったことがあります。聞くと、倒壊しそうな家の中に、“親の形見の琴”を残してきたそうです。とび職の経験を生かして、取ってきてあげたら、たいそう喜んでくれました」

尾畠さんと一緒に活動をした経験がある南三陸町社会福祉協議会の三浦真悦さんの話。

「尾畠さんが特別なのは、“被災者の気持ちに寄り添える”こと。『思い出探し隊』では、誰が写っているかわからないような写真でも、“すべての写真1枚1枚に思い出がある”と、とても丁寧に集めて、汚れを落としていたのが印象的でした。尾畠さん、以前はお酒が大好きだったそうです。でも、『東北から仮設住宅がなくなるまで断酒する』と、今も気持ちを寄せてくれています」

「かけた情けは水に流せ、受けた恩は石に刻め」──それが尾畠さんの座右の銘だ。苦労を苦労とも思わないのは、若いときにつらさを乗り越えたゆえか。彼の精神から学ぶべきことは多い。

終わり