互いを「彼氏」「彼女」という代名詞で縛らず、でも大切にしながら愛し合いたい。そんな気持ちから「お付き合い」を廃止した26歳OL・藤しおんが、男女の新しい愛のかたちを探ります。

「離婚するから、付き合って欲しい」

 キャバクラ時代、死ぬほど言われたこの言葉。言われるたびに、心が乾いた。どうせ、このようなことを言う人は離婚なんてしない。

「離婚するから、付き合って欲しい」「うん。じゃあ今すぐ離婚して♪」

 そう言うと、「じゃあ、付き合ってくれるの?」と聞かれる。次が確約されてないと、離婚しないんかい。乗り換えなんて、人に対して不誠実すぎる。

 なんでこんなにも脆(もろ)い愛をわざわざ数百万かけて、親戚大集合させて誓うのだろう。不思議で仕方がない。

 恐らく、みんな誰かに愛されたいんだろう。「家族」という組織に安心したいんだろう。私だって、いくら「彼氏いらない」と言っていたって、たまに人が恋しくなることがある。

 人恋しさは、お金で上手く解決することができないのか。

 彼氏はいらないけど、誰かにお金を支払って「愛されている」と実感してみたい。好奇心に耐えきれず、私は出張ホストというものを利用してみた。

 鶯谷を意識しつつ、待ち合わせは上野を指定した。私のお気に入りのワインバルを予約して、そこで待ち合わせ。

 今にも爆発しそうな心臓を抑えながら、店に向かった。彼は先に着いているようだ。名前を呼んで振り返った彼は、写真よりもはるかにカッコよくてびっくりした。ここ最近で会った男性の中では確実にナンバー1。綺麗なお顔立ち。一気にテンションが上がった。

 食事中は、お箸を並べてくれたり、注文する時に店員さんを呼んでくれたり、食事を取り分けてくれたり。仕草の一つひとつが少女漫画に出てくる理想の「爽やかで優しい彼氏」そのものだった。彼は店の中でもナンバー3の存在だったので、人気の理由が頷ける。

 2軒目に行こうかと店を出たところ、彼が「ダーツしたい!」と言っていたのでダーツバーに行くことになった。

 そこでも、「これに俺が勝ったら、ご褒美にキスしていい?」と整った顔立ちで少女漫画に出てくるようなセリフを語られ、心臓が破裂しそうだった。

 勝敗の結果は、彼が手加減してくれたらしく私が勝ったんだけど、「負けたけど、キスしたいからする!」と言って、ダーツバーの店内でキスをされた。

「負けたけど、キスしたいからする!」 台本があるのか? カメラはどこにあるんだ? と思うくらい、彼の言動全てが女性の夢見る理想のデートそのものだった。逆に、寒気がするほどに。

 ダーツバーを出て上野公園のベンチでイチャイチャしていたら、いつのまにか終電が近づいてきた。

「泊まれないの……?」と可愛い顔で誘われる。ありがたい誘いに乗りたい気持ちでいっぱいだったが、ちょうど翌日は出張が入っていたので、そのまま解散することになった。

 家に帰って化粧を落とした後、上野公園でイチャイチャしている時に首筋につけられたキスマークをなぞる。

 まるで夢を見ていたかのような、鮮やかすぎるデートだった。もちろんドキドキした。けど、やっぱり相手はプロすぎた。デートが完璧すぎて、人間らしさや生々しさを感じられなかった。

 また、「お金が発生している」と頭の片隅にあるからこそ、彼の言動全てにお金が見え隠れしてしまって、上手く台本に入り込めなかったのかもしれない。

 お金でドキドキと理想のデートは購入できるが、生々しい「人間からの愛」というものは買えなかった。お金が発生しないからこそ、「愛」に価値があるのかもしれない。

 出張ホスト体験は、この1回だけで終わった。

以下ソース
https://joshi-spa.jp/885720

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