印刷などを手がける廣済堂(東証1部上場)は親孝行な子会社、東京博善(東京・千代田区)を持っている。都内に6カ所の火葬場を運営している高収益会社だ。東京博善を狙って多くの投資家が群がった。澤田秀雄氏が率いる澤田ホールディングス、米投資ファンドのベインキャピタル、旧村上ファンドの村上世彰氏。さらに、免税店ラオックス社長の羅怡文(ら・いぶん)氏が新たに登場してきた。火葬場の争奪戦である。

 火葬場は全国的にほとんど公設だが、東京だけは例外。23区に9カ所あるが、公設は2カ所だけ。民営7カ所のうち6カ所が東京博善。町屋、落合、桐ヶ谷、四ツ木、堀ノ内、代々幡の火葬場を運営している。東京博善は東京23区で死亡した人の7割以上の火葬を一手に引き受けるガリバーなのである。

 東京博善の創業者は、1881(明治14)年に牛鍋屋「いろは」を開店、後にチェーン展開させた実業家・木村荘平氏。明治後半に、全国で寺院が運営する火葬場が自治体直営に転換するなか、東京では東京博善が自治体に先駈け、ほかの火葬場を統合したことから民営の火葬場として残ったとされる。

 1983年、廣済堂の創業者、櫻井文雄氏が東京博善の筆頭株主となり、85年、会長兼社長に就任した。東京博善の大規模増資を引き受け、94年に廣済堂が6割の株式を手に入れ、子会社に組み入れた。廣済堂は戦後の1949年、櫻井謄写堂として創業した。政財界のフィクサーとして知られる櫻井氏は、印刷会社から出発し、70年代から80年代にかけて、不動産開発、ゴルフ場経営、出版、葬祭など、さまざまな事業に手を出した。かつては多くのゴルフ場を経営するゴルフ場会社というのが実態だった。

 2004年11月、ドンが83歳で死去。巨額な借入金を返済するため、“負の遺産”の整理に着手。ゴルフ場子会社を次々と売却した。

 現在、廣済堂の屋台骨を支えているのが東京博善だ。廣済堂の2019年4〜9月期の連結決算は、売上高が前年同期比2%増の170億円、営業利益は同7%減の5億5300万円、最終損益は6億4800万円の赤字と低迷した。事業セグメントは「情報」「葬祭」「その他」の3つ。創業事業の印刷は、出版、人材とともに「情報」として括られている。4〜9月期の「情報」の売り上げは128億8000万円、セグメント営業利益は3億9100万円の赤字である。

 一方、「葬祭」の売り上げは41億6900万円でセグメント利益は11億7600万円の黒字。全社の営業利益は5億5300万円だから、葬祭部門が赤字を補?し、本社の経費も賄って、なおかつ、これだけの営業利益を生み出しているということだ。

 廣済堂は今や、葬祭会社なのである。株式市場は東京博善という“ドル箱”を、うまく経営に生かせず、株価に反映できていないことに苛立ちを隠さない。23区内に火葬場の新設は事実上不可能だし、本格的な“多死社会”が訪れるのはこれから。東京博善は競合相手がほとんどいないのだから、未来の果実は大きい。

 東京博善は超優良会社なのだ。単体の19年3月期の売上高は87億4500万円、当期純利益は9億3300万円。無借金で毎年、利益を積み上げてきたことから、純資産は、実に455億円もある。“金の卵”である火葬場の争奪戦の火ぶたが切って落とされた。

 廣済堂は土井常由社長が主導して19年1月に、米投資ファンドのベインキャピタルと組んでMBO(経営陣が参加する買収)による上場廃止の方針を打ち出した。ベインはTOB(株式公開買い付け)を実施して完全子会社にすることを目指した。

 創業家で第2位の大株主の櫻井美江氏と社外監査役の中辻一夫氏がこれに反対。投資家の村上世彰氏が率いるレノ(南青山不動産と共同で所有)が、MBOに対抗するTOBを仕掛けた。TOB合戦となったが、いずれも不成立に終わった。

続く

以下ソース
https://biz-journal.jp/2020/01/post_137037.html

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