山口敏太郎の現代妖怪図鑑

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紙食い婆

 オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第84回は「紙食い婆」だ。

 昔、あるところに貧しい母と息子が住んでいた。やがて、カネを稼ぐために息子は街に出た。真面目な性格の息子は、懸命に働いて母親にせっせと食料を届けた。

 だが、不幸なことに母親は足腰が立たなくなった。こうなると食べるものが手に入らなくなる。やがて口に入れるものがなくなり、近所の木の皮を削って食べるようになった。家の周囲に生えている樹木の皮は、すべてなくなってしまった。

 仕方なく母親は家の中の障子を破って、紙を食べるようになった。息子が実家に駆けつけた時、すでに母親は餓死していたが、紙を食べる音がひたすら響き渡っていたという。

 謎の怪音妖怪「紙食い婆」となったのだ。これは無念の思いで亡くなった人間が妖怪化し、不気味な音を立てる妖怪の一種である。深夜にそろばんの音を立てる妖怪「算盤坊主」はその代表的な存在である。

 音という形でしか自己主張ができない気の毒な存在だ。逆に昔の日本人は、音が聞こえただけで妖怪を作り上げることができたとも言える。妖怪は文化が豊かな証しである。

以下ソース
https://www.tokyo-sports.co.jp/column/yamaguchi/4125374/

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